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「会長とCEOの分離」のロジック 門多 丈

2013年07月11日
「経営と執行の分離」の原則に照らせば、執行の監視の責任者である取締役会の議長と業務執行の最高責任者(CEO)の役割を同一人が担うべきではない。

今年のJPモルガン・チェースの株主総会でジェイミー・ダイモン会長兼最高経営責任者(CEO)に会長職からの辞任を求める株主提案が出された。同行が自己勘定でのデリバティブ運用で巨額な損失を出したことを背景に、ダイモン氏への権限集中についての株主の懸念が表明されたのである。株主総会議案についての賛否について機関投資家にアドバイスを行うISSなどの議決権行使助言会社が、この提案を支持したという。議案は結果としては否決されたが、「経営と執行の分離」というコーポレート・ガバナンスの原則に関するものであり興味深い。


取締役会には業務執行の監視の責任があり、その議長に業務執行の最高責任者(ダイモン氏)が就いていることにリスク管理上の問題があった、との考えが今回の提案の背景にある。取締役会が「過大なリスク・テーク」を抑止する体制になっていなかったことを批判したのである。リーマン危機後のバーゼル銀行監督委員会の「コーポレートガバナンスを強化するための諸原則」(「諸原則」)の中でも、取締役会議長は社外の非業務執行取締役が勤めるべき課題についての検討を促している。以前我々の実践コーポレートガバナンス研究会勉強会の勉強会で講演頂いた栗原脩弁護士のご著書「コーポレートガバナンス入門」((社)金融財政事情研究会刊)の中で、英国のコーポレートガバナンス・コードでは「取締役会議長と業務執行の責任者である社長(CEO)の役割は同一人が担うべきではない」と紹介されている。


JPモルガンの巨額なデリバティブ損失については、CRO(最高リスク責任者)がどのような役割を果たしたかも究明されるべきである。バーゼルの「諸原則」の中ではCROの役割が強調され、充分な権限、経営資源とともに取締役会への直接のアクセスが保障されるべきと論じられている。CEOの暴走をCROが押えるべきと期待されているのであれば、「直訴」すべき相手の取締役会の議長がCEOであることは不具合である。


「会長とCEOの分離」のロジックは、最近の川崎重工の取締役会内紛についても通用する。M&Aの計画や交渉は「執行」の責任である。然るべきタイミングに、交渉の状況などについて社長(CEO)から、取締役会議長に報告されていれば良かったのである。そのためには取締役会議長が社長とは別人である必要がある。このような形で取締役会が運営されていれば、「俺は聞いていなかった」というような稚拙な発言が取締役から出ることもなかったと思う。


(文責:門多 丈)


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