ブログ詳細

S.K.グリーン著「グッド・バリュー」を読んで 門多 丈

2010年12月24日
グリーン氏はグローバルな金融危機の今後に向けての教訓は、「信任と信頼」「持続的な企業価値の最大化」の重視であると強調する。この2つの概念は我々が取締役会やガバナンスのあり方を考える上でも示唆に富むものと思う。
S.K.グリーン著「グッド・バリュー」(金融財政事情研究会刊)を読んだ。著者は香港上海銀行の会長から今年9月に英国の貿易相に就任したが、本書では「人類は進歩しているのか」「人類はどこに向かっているのか」という大きなテーマを取り上げていて、まるで哲学書を読んでいるようにも感じた。同氏の経歴も面白くオックスフォード大学でゲーテを研究し、英国国教会の聖職者にも叙任されている。グリーン氏の問題意識の背景にはリーマンショックに象徴されるグローバルな政治・経済・金融の混乱があり、これは「現実の曖昧さ」によりもたらされたと考えている。「現実の曖昧さ」の内容として、同氏は「(現実が)不完全であること」「進歩の方向の曖昧さ」「希望の性質の曖昧さ」の3点を挙げている。

グローバリゼーションの中での企業経営としては、同氏は、1) インテグリティ(企業、個人の価値観において)2) 目的の重視(手段より)3) 「野心」を良い方に生かす 4)バランスあるコミット(個人として社会に、グローバルに) 5) サーバント・リーダーシップ(奉仕する指導者)の原則が重要と強調する。

経営者や投資家に対しても、1) 公開市場、資本主義は本来不安定である 2) グローバリゼーションに残された貧困 3) 有限な惑星を認識すべきと説き、「私たちのカネがもたらす責任と危険を認識すべき」「新興国投資に当たっては投資家の方にも社会的責任がある」とも警告している。

グローバルな金融危機の今後に向けての教訓は、「信任と信頼」「持続的な企業価値の最大化」の重視であるとグリーン氏は述べている。この2つの概念は我々が取締役会やガバナンスのあり方を考える上でも示唆に富むものと思う。

香港上海銀行はグローバルな金融危機を乗り切った数少ない優良銀行と言われる。グリーン氏のこのような哲学や卓抜な見識が、金融危機の発生前や渦中でどのよう経営に反映され具体的な行動に結びついたのか、について個人的には大いに知りたい点でもある。

(文責:門多 丈)

この記事に対するご意見・ご感想をお寄せください。


こちらのURLをコピーして下さい

お問い合わせ先

一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

ページトップへ