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自民党日本経済再生本部のコーポレートガバナンスに関する提言について 安田 正敏

2013年06月11日
今年5月10日に発表された自由民主党日本経済再生本部の中間提言の中の①独立社外取締役の確実な導入、②取締役の教育方針についての開示というコーポレートガバナンスに関する提言に注目しています。特に、取締役の教育方針についての開示という点は今後教育研修の機会をどう提供していくかという点も含め重要な課題です。

今年5月10日に自由民主党日本経済再生本部の中間提言が発表されているのは周知のとおりですが、この提言は「失われた20年」といわれる衰退する日本経済(NDC: Newly Declining Countryということばも使っています)を再生するにはどうすれば良いかという諸施策を多岐にわたって論じており見方によってはごった混ぜの感が無きにしもあらずですが、我々はこの中のコーポレートガバナンスに関する提言に注目しています。
まず、日本企業の衰退の原因の一つが、競争の激しい国内予選で疲弊し国際競争の決勝戦で勝てないことだという言い訳を一蹴し、


「むしろ問題なのは、業者が多い中、低収益率で甘んじる取締役、株主、融資先金融機関の存在である。本来であれば、経営者が低収益率のままの経営を継続した場合、株主代表たる取締役が企業再建、産業再編など、外部の目で厳しい指摘をし、企業経営の刷新と新陳代謝を起こさなければならない。」


として、
1. 独立社外取締役の確実な導入
2. 取締役の教育方針についての開示
の二つをコーポレートガバナンス改善のための施策として提言しています。


独立社外取締役については会社法制部会でも長く議論され、結局、「遵守しないならばその理由の説明を開示すること」という東京証券取引所の緩い規則に落ち着いたのは周知のとおりですが、「取締役の監督機能、執行機能のうち、監督機能の一層の奏功を通じた業績向上や雇用の確保を通じた市場評価を高める観点を考慮すれば、独立社外取締役の導入、積極登用が不可欠である。」と強調している点は評価できます。


また、取締役の教育方針についての開示という点については筆者の知る限りでは会社法制部会でも議論されたことはないと思いますが、非常に重要な提言です。この提言では、「取締役の能力情報を積極的に開示するため、①指名前の役員候補者への研修の実績、②全ての役員に対する教育、継続教育の提供、及び必要性の評価に関しての方針を開示することを誘導する(例えば、東証上場企業が提出しなければならないコーポレートガバナンス報告書記載事項に上記2つの内容を追加する等)。」と取締役の就任前、就任中の教育研修の開示を求めています。


この点については、日本は相当に遅れており、アジアでもシンガポールのMAS(Monetary Authority of Singapore)や香港の香港証券取引所ではルール化され企業の取締役の教育研修の開示が求められています。


問題は教育研修の方法とその内容ですが、特定の会社の内部研修の域を脱してどの会社でも通用する取締役としての見識・能力を身につけることが重要だと思います。特に、日本では、会社で業務執行を通じて組織の階段を登りつめ「上がりのポジション」ととらえられがちな取締役の立場が、実は今までとは全く違う次元の能力、義務及び責任を要求されるポジションであることを認識することが重要であると思います。その意味で日本でも早急にそのような教育研修の場を用意することが重要であると思います。


(文責:安田正敏)



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