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アベノミクスの落とし穴 門多 丈

2013年04月03日
日本は未だヒト、モノ、カネの過剰の状況にある。 アベノミクスで経済成長を実現するためには、企業経営者のマインド・セットを変える必要がある。TPPは農業のみでなくすべての産業にとってのチャレンジである。
アベノミクスの三本の矢としての金融、財政、成長戦略については、多くの方が議論しているように最終的には成長戦略が鍵である。

今回の円安で日本の輸出が伸び、経済成長にどれほど繋がるかは疑問だ。これまでの「円高悲鳴」の中で顕在化していなかった、日本の輸出産業の国際競争力の弱化が顕在化するリスクがある。グローバル化の中で、成長可能性の高い日本の有力製造業は、オペレーションのかなりの部分を海外に移している。国内に残した事業は、円安による輸入原材料や電力・エネルギーのコスト増加に見舞われる。国内での事業を付加価値の高いものに絞り込む戦略が必要となる。

三菱総合研究所の最近のレポートでは三本目の矢に関する「思わぬ死角」として、国内の企業で三つの過剰(ヒト、モノ、カネ)が残っていると分析している。人の余剰については国内での売上高人件費比率の高止まりを、設備の過剰については有形固定資産回転率の低下を、指摘している。アベノミクスの狙うレジーム・シフトでは、賃金の上昇と設備投資の活発化でGDPの増加を狙うが、このプロセスが簡単には働かないことを示唆しているのである。

この状況を打開するためには企業経営者のマインド・セットを変える必要がある。質の高い人材を確保し然るべき労賃を支払う、効果的な雇用・賃金政策が必要である。イノベーションにつながる設備投資を傾斜的に行うべきである。グローバル戦略の効果的な展開や経営資源の効率化の点から、M&Aにも果敢にチャレンジすべきである。パナソニックやシャープなどの経営・事業戦略のダッチ・ロールを見る限り、日本の企業経営改革の実情はお寒い限りだ。種々の企業再生策の対象になるようなゾンビ企業が多数存在する経済の構造改革を行わないで、成長戦略はないであろう。

TPPの参加交渉に関し農業の衰退、生産減が声高に語られている。TPPの参加による新しい経済・競争環境の到来は、農業のみならず製造業、サービス業など日本のすべての産業がその戦略についてのパラダイムシフトを求めていることと自覚すべきと思う。

(文責:門多 丈)

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