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ファミリー企業の業績とガバナンス 安田 正敏

2013年03月25日
ファミリー企業あるいはオーナー系企業の業績が、そうではない企業に比べ相対的に優れているという研究が内外で発表されていますが、ファミリー企業あるいはオーナー系企業をどのように定義し、そこに共通する要素とは何かを見つけ出すことが、一般的な企業のコーポレートガバナンスを改善するうえでも重要な鍵になるのではないかと思います。
3月18日の日本経済新聞朝刊の経済教室に東大の柳川範之教授が「同族企業の利点に注目」という題でファミリー企業というコーポレートガバナンスの形態と業績の関係について論じています。

柳川教授はファミリー企業の業績が非ファミリー企業より優れている内外のいくつかの研究例を紹介していますが、日本企業については「慶応大学の斎藤卓爾准教授が、日本の上場企業の約3割がファミリー企業で、総資産利益率(ROA)などの業績指標も優れた面があることを示している」と紹介しています。また、「カナダのアルバータ大学のランドール・モック教授らは、最近日本のファミリー企業は世襲された場合も相対的に業績が優れていることを示し、その理由として婿養子制度の存在を挙げた」と別の研究例も紹介しています。

この点については、当研究会の3月12日の勉強会において講演いただいた東京海上アセットマネジメント投信(株)の大場昭義社長も注目すべき具体的例を示しながら同様な指摘をされました。大場社長は、2012年9月末時点で東証1部に上場している企業について、1989年12月末から2012年12月末までの23年間における配当を含んだ株価上昇率を計算し、そのうち上位100社の社名を示されました(ここでは敢えて具体的な社名は示しません)。そのうち、多くの企業がオーナー系企業で上位10社についてはほとんどがオーナー系企業であることが示されました。そしてこのオーナー系企業に見られる共通の特徴は独自の技術やビジネス・モデルに拠った価格支配力の強い事業を営んでいることを指摘し、競争企業を倒すことを目標とするのではなく自らの業績向上に専心するゴルフ型経営であると指摘されました。一方で、日本の非オーナー系企業の多くは価格競争で相手を倒すことを目的としてきたボクシング型経営であると指摘しています。

ファミリー企業またはオーナー系企業という呼び方は何となくわかったような気がする反面、厳密に定義するとなるとなかなか難しい概念です。この概念の定義は、企業の経営者が大株主であるという企業の場合は極めて明瞭ですが、この場合でも、いわゆるワンマン経営者の失敗の例はいくらでもあります。したがって、それ以上に重要な要素がここには隠されているように思います。

大場社長の挙げた100社を見渡した時、ひとつの考えとしては、創業者の理念が企業文化にDNAとしてしっかりと植えつけられそれに拠って経営が行われているという企業をオーナー系企業と読んでもいいように思います。この100社のうち、創業者ファミリーでない経営者が経営している企業とか、大株主ではないが創業者ファミリーが経営している企業とか、創業者ファミリーと非創業者ファミリーが交代で経営している企業とか様々な形態の企業がありますが、上位の多くの企業に共通している点は創業者の理念が企業文化にDNAとしてしっかりと植えつけられそれに拠って経営が行われている企業であるように見えます。

大場社長が挙げた企業の中でオーナー系企業をどのように定義し、そこに共通する要素とは何かを見つけ出すことが、一般的な企業のコーポレートガバナンスを改善するうえでも重要な鍵になるのではないかと思いますが、これにはもう少し時間をかけた研究が必要でしょう。

(文責:安田正敏)

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