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銀行貸付けとコーポレートガバナンス 門多 丈

2009年12月02日
コーポレートガバナンスを多様なステークホールダー(利害関係者)の観点から考えることが重要になっている。その点での貸付け債権者である銀行と債務者の企業との関係について考えてみたい。銀行のコーポレートガバナンス執行上での株主との違いはその目的が確実な元本回収と利払いの確保にあることである。
(社)金融財政事情研究会発行の週刊金融財政誌11月2日号の「メインバンクの将来」特集で、銀行とガバナンスの課題が取り上げられている。その中の座談会記事で、ある銀行幹部が取引先企業の業績が悪化した時のガバナンスが重要とし、企業の経営・財務状況のステージに応じて経営関与や監視の度合いを変えるべきだと述べている。具体的には 1)業績悪化 2)資金繰りに問題の発生 3)信用不安と経営危機 4)構造改革を通じたコストダウンの実施 5)営業力強化による収益増加の追求、の5段階での管理である。企業の状態の違いに応じて効果的にガバナンスを行使する考えは株主にも参考になると思う。  

株主と銀行のコーポレートガナンスの執行に於ける目的の違いは、株主にとっては企業成長の果実を獲得することにあり銀行にとっては貸付け債権の元本の確実な回収と利払いの安定的な確保にあることにある。企業の収入(キャッシュフロー)の分配の面では株主と銀行の間では利害相反の問題が存在する。

株主と銀行がコーポレートガバナンスの行使の上では、相互に依存できる機能にも注目すべきと考える。グローバルな経済・金融危機の中で提起された問題は企業の継続性(sustainability)であり、これは株主と銀行が共有できる課題である。企業の成長性は株主が最も注目するポイントであるが、銀行にとっても企業の成長が貸付金の保全のもっとも有効なファクターとなる。また銀行の強みは相手企業と日常的に密接なコンタクトがあり、要求すればかなり詳細な情報を入手できる点にある。効果的なガバナンスの行使にはこの関係は有用と思う。

(文責:門多 丈)

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