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JAL年金問題の創造的解決を 門多 丈

2009年12月14日
JALの年金問題は、企業再建のためには支給減額が必須とする経営陣と、年金は給与の後払いであり老後のためにも減額を拒否する受給権者が厳しく対立し、解決が難しい。根底に受給者の将来の生活への不安があることに配慮し、それを和らげるような施策も盛り込むべきではないか。一案として将来の年金支給にインフレスライド条項を設けること、減額を受け入れた受給者に対し新生JALのストック・オプションを提供することがある。
JALの年金問題は、企業再建のためには支給減額が必須とする経営陣と、年金は給与の後払いであり老後のためにも減額を拒否する受給権者が厳しく対立し、解決が難しい。経営破綻した米国のGMと同じ確定給付年金制度を採用する企業に生じるレガシー・コスト(負のコスト)の問題である。この解決には、企業再生にも合致するような創造的な仕組みを考え年金受給者の納得を得るよう対応すべきと考える。

今回交渉が難航している根底には、受給者の将来の生活への不安がある.それを和らげるような施策も盛り込むべきではないか。一案として、将来の年金支給についてはインフレスライド条項を設けることと、減額を受け入れた受給者に対し新生JALのストック・オプションを提供することが考えられる。

年金受給者にとっての老後の生活設計での不安の一つはインフレである。年金を給与の後払いと考えると、受給者にとっては足元のインフレやインフレ期待はJALに働いていた当時に比べかなり下がっているはずである。(実質購買力の観点)この点では、将来の年金支給額が減額されることに一定の経済合理性があると思う。その際将来のインフレリスクも考えておくべきと考える。年金の財政計算には詳しくないが、インフレとなり長期金利が上昇すれば年金債務の割引率も上昇し、計算上の年金債務額は減少すると思う。またインフレ下ではポートフォリオの利回り上昇も期待できる。物価連動債の組み込みなど、ポートフォリオ構築上の工夫も可能である。

年金減額で受給者に犠牲を強いる訳であるから、企業再生が成功した際はその果実を受給者に分配することには合理性がある。具体的には受給者にストック・オプションを配賦し、企業価値が向上し株価が上がった場合には利益を享受出来るような仕組みになる。今後考えられる公的出資の実行株価以上にオプションの行使価格を設定すれば、ダイリューション(発行株式数の増加による一株当たりの企業価値の希薄化)の問題も軽減する。
以上のような施策は、従来の年金制度では想定されていない。特別法の制定とし国会での議論を深めることも有意義と思う。この仕組みがうまく働くためには、新生JALが差別化できるビジネスモデルで成長することが前提となる。そのためには、法的整理で関係者の関係を明確に整理し、今後の戦略を担うにふさわしい経営陣と、多面的に成長を支援できる事業会社などとパートナーを組むことが重要だと思う。

(文責:門多 丈)

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