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デジタル情報化とリスク管理・内部統制の課題(2) 門多 丈

2013年12月25日
米国などでのeディスカバリー(電子情報証拠開示)での知財訴訟の普及もあり、情報や知財の厳密で適切な管理は企業戦略、知財戦略の点で欠くべからざるファクターとなっている。

11月の実践コーポレートガバナンス研究会の勉強会「グローバルなデジタル訴訟社会を勝ち残るために」でのAOSリーガルテック社の杉浦和彦様の講演の後半は、eディスカバリーについてであった。eディスカバリーとは米国の民事訴訟などでの電子情報での証拠開示の手続きで、米国ではこの運用が厳密なルール化されていることもあり各国企業もこれに適切に対応する対策を立てることが必要となっている。


この関連で最も有名な係争は、アップルとサムスン電子の知的財産権訴訟である。スマホやタブレットの特許を侵害しているとして、まずアップルがサムスンを米国で提訴した。サムスンも応訴し10ヶ国、15の裁判所で争われる大事件となった。


この係争の特徴は


  1. 損害賠償の対象の大部分が意匠、デザイン、パッケージで、インターフェースなどの特許使用料が中心ではなかったこと
  2. 損害賠償請求額が巨大であったこと。米カリフォルニア連邦地方裁判所の評決で決定された賠償額は9億8千万ドルで、これはサムスンが訴訟対象品を米国で販売の利益相当額である
  3. 判決が分かれ、日本や韓国ではアップルの請求が却下されたこと

にあった。

この訴訟では膨大なドキュメント(3.5億ファイル)と作業(6千万回の検索と4億ページのレポート)で、eディスカバリー訴訟ならではの展開となった。サムスンは当初サムスンは「アップルがソニーのスマートフォンを真似た」、争点となったズームイン/アウト(指でつまむように画面で操作することで表示の大きさを変える)については「三菱電機がマルチタッチテーブルとして2001年に開発していた」などと応訴した。アップル側弁護士による膨大な電子証拠検索の結果、サムスンの提携先であるグーグルが「アップルのデザインの侵害の可能性」を指摘し、サムスンの経営幹部に「あまり似たデザインにならないように」変更を求めた経緯が電子メールのやり取りで判明した。これがアップルの連邦地方裁判所での勝訴(陪審団の評決)の主な要因となった。

このようにeディスカバリーでの知財訴訟が普及することもあり、米国の企業経営にとっては情報や知財の管理は企業戦略、知財戦略の点で欠くべからざるファクターとなっている。杉浦氏によると、有力な米国企業ではリーガルテック(知財の保全や企業間の係争に電子データを適切に使用し管理する)部門は「(法務部門などとは別の)単独の機能組織となっている」とのことである。グローバルな活動を行う日本の企業もこのような競争、訴訟環境を十分認識し戦略的な対応を行う必要がある。

(門多 丈)

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