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日立の企業変革に思う 門多 丈

2014年01月21日
日立の「復調」の背景には、経営の明確な変革の姿勢とコーポレートガバナンス体制の充実がある。
一時は「眠れる巨人」と言われた日立の「復調」が目覚ましい。今回の社長人事にもその気概を感じる。先月の我々の研究会のお昼の勉強会では日本取引所グループ(JPX)グループCEOの斉藤惇様に講演していただいたが、その中でも日立の企業改革とコーポレートガバナンス体制を高く評価されていた。先輩の処遇のために名目的にあった子会社も含め数百あった子会社を川村現会長は積極的に整理統合した。日立の取締役会も過半数が社外で、外国人取締役もいる構成にした。

川村氏は日立が「どん底」にあった時に子会社から呼び戻され、経営の立て直しと事業戦略の見直しに邁進した。経営者として存在感の目立つ三菱ケミカル・ホールディングスの小林社長も「傍流」子会社の経営からグループのトップに就任した。たゆまぬ企業変革や経営のグローバル化のためには、従来の経営や事業戦略を「外から」新鮮な目で見直すことの重要性を示唆していると思う。

その点では武田製薬がフランス人のウェーバー氏(47才)を社外から社長に起用したことは注目すべき動きと思う。同社の海外売り上げが5割を超え、従業員のうち3分の2が外国人となっている状況からは、今回の決定は戦略的であるとともにロジカルと思う。グローバル化の中で、M&A戦略も絡めた企業戦略の推進責任者としてウェーバー氏が任命されたと思う。既に同社の取締役会には外国人(8人のうち1人)がいて、業務執行の幹部であるコーポレート・オフィサーでは11人のうち7人が外国人となっている。資生堂社長には日本コカコーラ社元社長の魚谷氏が就任する。資生堂は国内外での業績不振とブランド構築の停滞から今回社長リクルートに動いた。企業の戦略課題や成長ステージに応じて、企業変革のできる経営者を内外から選ぶ動きが日本でも出てきたと考える。

かつては「ものつくりのわからない取締役は不要」と明言していたトヨタも社外取締役を導入した。頑なに社外取締役の導入に反対するキャノンは今やコーポレートガバナンスのガラパゴス状況にあるが、業績と株価はこの間明らかに停滞している。経団連の首脳はこのような動きをどう見ているのであろうか。

(文責:門多 丈)

この記事に対するコメント一覧

Posted by 安永隆則 - 2014年1月28日 08時03分
ブログ興味深く読ませていただきました。28日の日経報道では、川村氏は、相談役に退かれるとのこと。残念ですが、ポストに執着されない姿勢が経営の切れ味に結び付いているのではとの感想を持ちました。 社外取締役がなかなか企業に受け入れられないのは
取締役というポストが社員の功労の対価に結び付いているという日本の企業文化が背景にあると思います。その意味で根の深い課題ですが、改革の必要なことはいうまでもなく、今回の会社法改正を契機に議論を深めていくべきだと改めて感じております。

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