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理研の「総括」は終わっていない 門多 丈

2014年04月07日
今回発表された理研の調査報告は、社会の期待する「最終報告」ではない。問われているのは不正な論文をずさんな管理体制で世の中に出した理研の組織としてのガバナンスの問題である。
今回発表された理研の調査報告は、社会の期待する「最終報告」ではないことは明らかである。今回の事件で問われているのは不正な論文をずさんな管理体制で世の中に出した理研の組織としてのガバナンスの問題と世界的なインパクトをこの論文で狙った理研の経営の責任が問われているのである。今回発表された調査は、もともとこれらの問題を対象にするものでは無く、理研としてはこの事件の「総括」は未だなされていないことを自覚するべきである。

理化学研究所 研究論文の疑義に関する調査報告書
http://www3.riken.jp/stap/j/f1document1.pdf

この調査委の位置付けは企業不祥事の調査、総括のプロセスに照らせば明らかである。オリンパス事件の場合には専門家による調査委員会で「前経営陣による飛ばしがあったのか、
それを解消するためにM&A取引などで資金をどう捻出したのか」を調査し、別途第三者委員会でこの問題を引き起こしたガバナンスの問題、今後のあるべきガバナンス体制についての議論を深めた。みずほファイナンシャル・グループの「反社融資」事件についても同じプロセスが踏まれた。今回の調査報告は表題でも明らかなように「研究論文の疑義に関する」ものでしかなく、第三者委員会で真相を究明し今後のガバナンス上の課題を検討するべきだ。

研究開発のリスク管理の面では、小保方さんの実験ノートについては記載が乏しく再現不能、研究不正が疑われた時の自分を守る手段としても不適切、実験データが小保方さんの個人所有のPC入って調査できない、などの問題も指摘されている。

今回の不祥事には理研の組織行動自体の問題があったのではないか、山中教授の京大研究陣への対抗意識や、アベノミクス成長戦略の下で特定国立研究開発法人の指定を意識した「焦り」があったと考えざるを得ない。研究組織としての行動倫理の原点と研究開発全体のマネジメント・スキルが問われている。最近発表された臨床実験不祥事のノバルティス社の調査委報告では「製薬会社丸抱えの研究と言っても過言ではない」と批判されている。

一方今回の事件は先端研究などについては、その組織の戦略に相応しい然るべき評価(明確な時間軸の設定も含め)の枠組みを定めサポートするのも重要であることも示唆している。これもガバナンスの重要な役割であると思う。

(文責:門多 丈)

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