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経営に「平時」はない 門多 丈

2014年04月21日
経営に「平時」はない。松村劭著「名将たちの戦争学」を読み参考になった。
経営に「平時」はない。友人に勧められ「名将たちの戦争学」(松村劭著。文春新書)を読んだ。著者はクラウゼビッツの「戦争論」を引用し、戦争はいわば「霧の中」で行うものとする。厄介なのはその中でさまざまな「摩擦」が生じることであり、具体的には恐怖、肉体的辛苦、錯誤、幻想、錯乱、予期しない環境条件の変化など。戦争に習熟した将軍とは、それを覚悟し摩擦の引き起こす障害を克服できる者であるとする。企業経営についても全く同じことが言えると思う。

著者は戦いの原則の第一として「目標設定」を挙げ、この原則が「戦争に首尾一貫性を与える」とする。企業が理念、ミッションを明確に掲げ、経営と事業の遂行でぶれないことの重要性に通じる。戦闘力の六要素としては、情報力、指揮・通信、火力、機動力、防御力、人事・兵站力を挙げる。企業経営でのリーダーシップ、組織・システム、経営資源の議論に通じるものである。

優れた指揮官の取るべきは、1) 広く何をなすべきかを聞き、2) 少数の賢者の助言を得て、3) 最良の策を一人で決定し、4) それにこだわるべし、とある。長年の歴史の中で試された原則であり、優れた経営者の要件にも共通する。

経営者として心すべき点についての面白い記述もある。四六時中、軍隊を「有事即応体制」に置くべきでないと著者は言う。平和時の軍隊は、戦闘力の充実、特に教育・訓練が容易にできるような場所に駐留させ、情勢が緊迫した時に戦略展開させるように管理することが肝要、とある。まさに組織と人事を活性化するような企業風土が重要なことを示唆していると言える。

プーチンのクリミア併合は国際ルールにも反するものだが、この本の中で彼に捧げたい良い格言を見つけた。19世紀のスイスの名将ジョミニの「もっとも正当な戦争は、疑う余地のない権利に基礎を置き、求められる犠牲と予期される危険に見合った国益がある戦争」である。

(文責:門多 丈)

この記事に対するコメント一覧

Posted by 藤井 博 - 2014年4月30日 07時02分
面白そうですので私も買って読んでみます。目標設定といえば、ソフトバンクの孫社長も常々、『判断に迷うのは目標が明確でないからだ』と言われていると本で読んだことがあります。目標設定は原則なんですね。

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