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企業と投資家の「協創」とコーポレートガバナンス 門多 丈

2014年05月13日
経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ」中間レポートでは企業と投資家の望ましい関係構築として「協創」が提言されている。このコンセプトは、我々の考えるコーポレート・ガバナンスの理念と一致する。
経済産業省が取り組む「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトの中間論点整理(伊藤レポート)が発表された。

http://www.meti.go.jp/press/2014/04/20140425007/20140425007.html

このレポートの中ではあるべき方向性として、企業と投資家の持続的成長に向けての「協創」が提言されている(資料「中間論点概要(PDF)」p.16.以下「資料」)。このコンセプトは我々の実践コーポレートガバナンス研究会のコーポレート・ガバナンスの「企業の持続的成長をめざし、経営のアクセルとブレーキ両方を重視する」理念と一致する。持続的成長企業の4つの共通項(競争力の源泉)として、1) 顧客への価値提供、2) 適切なポジショニングと事業ポートフォリオ構築のための選択と集中、3) 継続的なイノベーション、4) 環境変化やリスクへの対応、とある(資料p.6)。これらの課題は、社外取締役も参加する取締役会でたゆまず議論、確認、検証することで効果的に機能すると考える。

レポートでは資本市場の短期化(企業の中長期的な企業価値を評価し、その形成に寄与するものになっていない)の中で、企業経営も「日本型短期主義」となっている問題が提起されている。その原因として「経営者が比較的短期サイクルで交代する」ことなどが指摘されている(資料p.4,12)が、社外取締役も参加する取締役会の一貫性のある監督が重要ということにもなると思う。

資本コストとROEのミスマッチについての論議(資料p.10,11,17)は「生煮え」だ。資本市場での企業価値の観点から計算される資本コストと、会計上の純資産へのリターンであるROEの違いについての基本的な違いについての考察も不足していると思う。レポートの中で日本株に期待する資本コストとして、国内外の機関投資家への「アンケート」の数字をアプリオリに使うのは納得できない。CAPM理論が有効かは議論の余地があるが、やはり資本市場での企業価値、株価形成の理論を深め議論していくべきと思う。中長期的な企業価値の形成の議論が目的であれば、資本のコストを重視すべきと思う。資本の効率的な管理の点では、経営も資本コストに準拠するEVAなどを使う時代となっている。

このレポートでも企業と投資家の対話の重要性が強調されており、スチュワードシップ・コード議論の高まりとも合致する(資料p.14,15)。有効な対話を可能にするためには、コーポレートガバナンス・コードの導入を含めた取締役会の機能強化がまずは前提になることを充分議論してもらいたい。

(文責:門多 丈)

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