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元気な企業がいる 門多 丈

2014年06月03日
LIXIL、信越化学、三菱ケミカル、ソフトバンク、など果敢に成長戦略にチャレンジする企業がいる。これらの会社に共通するのは、戦略的企業成長と変革への経営の強固な意志である。
経済のグローバル化のなかで、生き残りを賭けた成長戦略にチャレンジする日本企業も出てきた。これらの会社に共通するのは、戦略的成長と変革への経営の強固な意志である。

LIXIL社は旧東洋サッシグループと伊那陶器グループが統合して出来た住宅、台所,衛生機器の総合メーカーである。2013年にGEのグローバル幹部であった藤森義明氏をCEOとしてリクルートした。狙いはグローバルビジネスの展開と収益率の向上にあった。同社はそれまでは海外ビジネスの比率が約1%と極端に小さく、利益率も低いという問題を抱えていた。藤森氏は海外での売上を伸ばすためにはM&A戦略を取り、米国の衛生陶器の老舗アメリカンスタンダード、独住宅用機器メーカーのグローエの買収などに大胆に動いた。藤森氏はM&Aに当たっては、GEで鍛えられた手法を駆使し、PMI(post merger integration;買収後の円滑な経営統合)を実践している。営業利益率の向上には、M&Aによる収益性の高い海外ビジネスの取込みと国内事業の効率化で取り組んでいる。米国企業経営経験らしく、資本・財務戦略にも周到で、独グローエ社の買収に当たってはSPC(特別投資会社)方式を採用し、政策投資銀行(DBJ)のファイナンスを活用するとともにLIXIL社のバランス・シート上の債務の肥大化を防ぐ手を打っている。

信越化学社の業績も好調だ。同社は80年代に米国で水道管などの塩化ビニール事業に進出した。当時は「今更なんでローテックのビジネスを手掛けるのか」との批判もあったが、半導体関連事業がもつ極端なビジネス・サイクル・リスクを軽減するための優れた経営判断であった。ローカルビジネスに徹することで、この事業での同社の米国でのマーケット・シェアは高く収益性も良い。同社は最近水道管の原料である塩化ビニールの工場を米国に設けることを発表した。豊潤なオイルシェールを利用することで、原料の安定的な調達とコスト低減を図ることへの着眼は評価できる。

三菱ケミカルホールディングスの大陽日酸社の買収も注目すべき動きである。工業用ガスのビジネスを取り込むことで、総合化学社としての三菱ケミカルの業容は大いに充実するとともに、世界の化学メーカーのランキングも上昇する(売り上げが10位から7位になる)。米国の化学産業がオイルシェールを原料とした化学工場の増設に動いている、大陽日酸の工業用ガスビジネスにとっては商機だ。グローバルな市場では仏エア・リキッド社などとの苛烈な競争を強いられている大陽日酸にとっては、三菱ケミカル傘下に入ることでパワーが増す。三菱ケミカルの小林喜光社長のリーダーシップは目覚ましいが、経歴もユニークだ。イスラエルの研究所に勤務した経験もあり、社内では明らかに「傍流」と見られていたディスク事業の出身である。

ソフトバンク社は営業利益でNTTドコモ社を抜いた。米国でも大手携帯通信会社を相次いで買収した。買収に当たっての所要資金はLBOの形で、米国の社債市場から調達した。孫正義社長は、ITブームの際にも時流に流されず「通信プラットフォーム事業を追求する」と明言していた。孫社長の戦略の軸は見事にぶれていない。

(文責:門多 丈)

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