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スピード感に欠ける会議運営 ~コーポレートガバナンス・コード有識者会議の議論について~  安田 正敏

2014年11月04日
議事録が公開されている第3回会議までの有識者会議の議論の進め方は有識者の方々の時間の無駄遣いであると思います。冒頭から最も深く議論しなければならないのは、「持続的な企業価値向上のための自律的な対応を促すことを通じ、企業、投資家、ひいては経済全体にも寄与する」コーポレートガバナンスを実現するには、何が重要でそれらの原則の優先順位はどうあるべきかという原理原則であると思います。

現在、金融庁と東京証券取引所を共同事務局としてコーポレートガバナンス・コード有識者会議が本年8月7日より開催されています。10月31日に第5回目の会議が開催されていますが、本日11月4日時点で議事録が公開されているのは第3回有識者懇談会までです。このブログでは何回かにわたってこの議事録を読んで感じたことを書きたいと思います。

第1回有識者懇談会では、今回のコーポレートガバナンス・コードの策定は「持続的な企業価値向上のための自律的な対応を促すことを通じ、企業、投資家、ひいては経済全体にも寄与する」という今年6月に閣議決定された「日本再興戦略 改定版」の目的を実現することであること確認し、東京証券取引所の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」、「OECDコーポレート・ガバナンス原則」、英国、ドイツ、フランスのコーポレート・ガバナンス・コードを紹介しながら、「定期的見直しのできるシステマティックなものにすること」、「目標としての原則的な考え方と、それを実現する手段との間で、個々の対応関係がはっきり分かるようなものにすること」、「国際的にも高く評価されるもの」という到達点を述べています。

第2回の会議では、OECDのマッツ・イサクソン課長がOECDコーポレート・ガバナンス原則を説明しこれを巡って議論しています。OECDコーポレート・ガバナンス原則の項目に沿って議論を進めるというやり方をとりながら第3回の会議では「株主の権利、株主の平等性」と「ステークホルダーとの関係」という項目を巡って議論しています。

第4回と第5回の議事録はまだ公開されていないので議論の中身は分かりませんがこれまでの会議の運営の仕方から推察すると、さらにOECDコーポレート・ガバナンス原則の項目に沿って議論を進めているものと思われます。

 ここで大きな疑問を抱きます。そもそも「有識者」として選ばれて会議に臨んだメンバーは各国のコーポレート・ガバナンス・コードあるいは原則とその考え方等第3回までに議論していることは熟知しているはずですし、筆者の面識のあるメンバーはそれらについて十分に熟知していることを筆者も知っています。ここで冒頭から最も深く議論しなければならないのは、「持続的な企業価値向上のための自律的な対応を促すことを通じ、企業、投資家、ひいては経済全体にも寄与する」コーポレートガバナンスを実現するには、何が重要でそれらの原則の優先順位はどうあるべきかという原理原則であると思います。その議論の際にOECDコーポレート・ガバナンス原則や各国のコーポレート・コードを有識者の知識に基づいて参照にするというのがそもそも有識者を選んだ理由ではないでしょうか。そのような原理原則の議論を深めないまま、例えば第3回の会議において株主総会の集中を避けるために「決算日」と「基準日」を切り離すべきとか、情報を株主に徹底させるために招集通知の発送日をもっと早めるべきだという議論を優先して行っているのは(このような議論の必要性を否定するものではありませんが)、議論の進め方としては本末転倒のように思います。そんなことで3回も会議を費やすということはまさに有識者の方々の時間の無駄遣いであると思います。その点では、英国のコーポレート・ガバナンス・コードのように最初から取締役会のリーダーシップ(第A章)と取締役会の実効性(第B章)について優先的に時間をかけて議論を深めて欲しかったと思っています。

 日本のコーポレートガバナンスの実効性を確保するための原理原則についてはもう一つ重要な点を指摘したいと思います。コーポレート・ガバナンス・コードの議論をする中で「日本の実情」という点ですが、例えば第2回の会議で大場メンバーは「あまりに実情を踏まえると前向きな議論になりません。実情をしんしゃくし過ぎているからこういう現状が起きているかもしれないという観点がある」という意見を述べられていますが、Comply or Explainの原則を取り入れるということは、現状から見て相当高いハードルでも重要な原則についてはそれを採用するという姿勢が必要であると思います。なぜなら、その原則を採用しない理由を真剣に考え説明しようとすることで自社のコーポレートガバナンスの問題点が見えてくるからです。その説明が合理的で多くの人に納得してもらえるならばそれがベスト・プラスティックの一つになることもあり得ると思います。そういう意味で第1回会議の冨山メンバーの「やっぱりここで目指すべきは、どの国よりも経営者に厳しいコーポレートガバナンスを我々は目指すべきで、それが多分基本的なスタンスだと思います」という発言を重く受け止めるべきでしょう。

(文責:安田正敏)


この記事に対するコメント一覧

Posted by 門多(実践コーポレートガバナンス研究会) - 2014年11月6日 11時18分
同感です。私も経団連の意見を反映する方が有識者会議で「実情に応じてガバナンスの在り方を検討すべき(ゆっくりやる)」と言うのはおかしいと思っています。経営、資本などの効率、ガバナンス改革がしっかりしていないから「みじめな実情」になっていると思います。

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