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常勤監査役の経営者からの独立性を確保せよ ~コーポレートガバナンス・コード有識者会議の議論について~ 安田 正敏

2014年11月18日
常勤監査役の経営者からの独立性が担保されていないという実態が監査役制度の最大の欠陥であり、海外の投資家から日本の監査役制度が評価されない最大の理由ではないかと思われます。この問題を解決するに「中立的・独立的な職務執行を担保するため、常勤監査役として社外監査役が務める制度を導入すべきである」ということと「経営者の指揮・命令系統下に置かれている内部統制部門を監査役会の指揮・命令系統に並列させ監査役の業務監査の機能を強化する」ということをコーポレートガバナンス・コードに明記することを提案したいと思います。

日本のコーポレートガバナンス・コードについて考える場合、監査役(会)制度の役割を考えることを避けて通ることはできません。この点について監査役監査を機能させるためにはどうすればよいかを考えてみたいと思います。

先のブログで、「取締役の職務の執行を監督する常勤の監査役は内部出身者であり経営者の人事権の下にありその独立性が担保されていないこと。場合によっては、社内人事の都合で4年という法定任期を全うせずに社長から退任を迫られるようなケースも珍しくない」という日本の企業の実情を指摘しましたが、常勤監査役の経営者からの独立性が担保されていないというこの実態が監査役制度の最大の欠陥であり、海外の投資家から日本の監査役制度が評価されない最大の理由ではないかと思われます。つまり、日本のコーポレートガバナンスの実態が、会社法第381条第1項の「監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。」という規定を守ることを難しくしているという点は極めて重要なコーポレートガバナンスの欠陥であり、コーポレートガバナンス・コードではこの点を是正することを明確に表明すべきであると考えます。

具体的には、第4回有識者会議に冨山メンバーが提出した20141020日付けの意見書にある「中立的・独立的な職務執行を担保するため、常勤監査役として社外監査役が務める制度を導入すべきである」という点をコーポレートガバナンス・コードに入れるべきであると考えます。これは「実情をしんしゃく」すれば多数の人が無茶だと思われるかもしれませんが「現状維持はあり得ない」という立場に立てば大変重要な提案であると思います。

「社外の常勤監査役という考えは、社内の事情に精通していない外部者に常勤監査役を任せるのは無理だ」という反対意見がおそらく出てくると想像されますが、そこで重要な点は、内部監査部門の活用と連携です。現在、経営者の指揮・命令系統下に置かれている内部統制部門を監査役会の指揮・命令系統に並列させ監査役の業務監査の機能を強化するという改革を行うべきであると考えます。日本内部監査協会も監査役と内部監査部門の連係を重視して2014年には日本内部監査協会の改正内部監査基準で、監査役(会)等への報告経路確保を義務付けています。

「中立的・独立的な職務執行を担保するため、常勤監査役として社外監査役が務める制度を導入すべきである」ということと「経営者の指揮・命令系統下に置かれている内部統制部門を監査役会の指揮・命令系統に並列させ監査役の業務監査の機能を強化する」ということをコーポレートガバナンス・コードに明記することを提案したいと思います。特に、内部監査は直接的に法律で裏付けられておらず、間接的には金商法による内部統制(J-SOX)の実施基準において内部統制の整備と運用についての監査を内部統制部門に期待しているにすぎないので、コーポレートガバナンス・コードで内部監査の位置づけを明確にすることは重要であると考えます。さらに、監査役会設置会社にも設置すべきであると考える指名諮問委員会と報酬諮問委員会において内部監査部門のスタッフの指名と報酬を決めることにすると内部監査部門の経営者からの独立が担保されると思います。

監査役の業務監査においてより重要な監査領域として統制環境の監査があります。この統制環境の監査においては社内の体制にどっぷりとつかってきた社内出身の監査役よりは社外監査役の方が” tone at the top”をより新鮮な外部の目で見ることができます。

 

(文責:安田正敏)


この記事に対するコメント一覧

Posted by 三神 明 - 2014年11月19日 16時50分
貴ブログの内容を拝読しました。

1.社外の常勤監査役という考え方には大賛成です。
わが国でもどこの業界でも通用するプロの経営者が
出てきましたが、どの業界にも通用するプロの
常勤監査役がいてもおかしくないと思います。
ただ、監査役の業務監査にも共通のフレームワークが
あった方が良いとの考え方から、先の監査役アカデミーでは
ERMのフレームワークを提唱しました。
このようなフレームワークがあれば、監査役の業務監査はそれほど
難しいものではありません。
そのことは、小生の内部監査部門での人材育成の経験から、営業部門や管理部門で
評価された人は、短期間で優秀な内部監査人になることでも
証明できると思います。

2.IIA(内部監査人協会)は内部監査部門について明確な定義をしており、
「内部監査部門は、ガバナンス、リスクマネジメント、インターナルコントロール
の各プロセスの有効性を評価、改善する」としています。
また、ガバナンスについても「組織体の目標達成に向けて、組織体の活動について、
情報を提供し、指揮し、管理し、そして監視するために取締役会によって実施される、
プロセスと構造の組み合わせ」と定義しています。
しかしながら、一般的に経営者直轄のわが国の内部監査部門が「ガバナンスの有効性を
評価、改善する」ことは構造的に不可能です。
日本内部監査協会の基準では、この辺りは「内部監査の本質」というような言い方で
あいまいになっていますが、ガバナンスの有効性を評価、改善するのが
最大の役割である監査役の業務監査を強化するためにも、「内部監査部門を
監査役会の指揮命令系統に並列させる」というご意見にも賛同致します。
Posted by 大谷 剛 - 2014年11月19日 16時47分
ご無沙汰しております。安田様の投稿文「常勤監査役の経営者からの独立性を確保せよ」を共感を持って拝読しました。社外常勤監査役の監査人としての実効性を担保するためには、内部監査部門(新COSOが定義する第3のテ゛ィフェンス・ライン部門)を指揮命令系統下に確保することは必須要件と存じます。

現在ほとんどの会社で、社内常勤監査役が監査役監査で求められる期中・期末監査を実施しております。しかし監査役監査の監査資源の実態は極めて厳しいものがあります。平成26年9月19日付の日本監査役協会によるアンケート調査結果によれば、常勤監査役の1社あたり平均人数は1乃至2名、監査ロシ゛スティックス確保や監査調書の案文作成などの重要業務を担う専任監査役スタッフ数も同じく1乃至2名です。専任監査役スタッフ設置会社は5社に1社に留まっています。

一方、監査役に求められる監査業務(実際に手を動かす監査人として)は、会社法、金商法、業法その他全ての法令に対して取締役および経営執行責任者が遵守していることを保証する業務監査と、会計フ゜ロフェッションである会計監査人の監査の方法と結果に対する相当性判断ならびに外部法人である監査法人の内部統制の有効性評価を目的とする会計監査の両方です。

加えて改正会社法では、会社の隅々に張り巡らされた内部統制システムの運用状況評価まで業務監査のスコーフ゜に加わります(従来は構築状況評価でした)。

これらの監査業務スコーフ゜は極めて網羅的かつ高い専門性を必要とされるものです。このニース゛を満たすためには、慢性的な監査役監査資源不足を内部監査部門との指揮命令系統確保により補うことは必然だと考えています。この方向性で日本の上場各社が動けば、英米型の監査委員会モテ゛ルに十二分に対峙しうる日本の監査役会モテ゛ルの実現に大きく近づくと存じます。

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