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監査等委員会設置会社への移行表明企業、アンリツ ~監査等委員会設置会社は運用の監視が重要~ 安田 正敏

2015年02月02日
アンリツ株式会社が今年6月の定時株主総会で決議されることを条件として監査等委員会設置会社へ移行する方針を決議しました。アンリツにはその心配はないと思いますが、しっかりした内部監査部門を持たず常勤の監査等委員を置かなくも会社法の違反にはならない監査等委員会設置会社については、外部の眼、例えば投資家の眼から見るときはその運用の実態に十分注意を注ぐ必要があると思います。
アンリツ株式会社が今年6月の定時株主総会で決議されることを条件として監査等委員会設置会社へ移行する方針を決議したことを1月29日に開示しています。アンリツは現在、監査役会設置会社でかつ取締役会の任意の諮問機関としてそれぞれ社外取締役を委員長とする指名委員会と報酬委員会を持ち、非業務執行の独立社外取締役3名、社内の業務執行取締役5名、社外監査役2名、社内常勤監査役2名とコーポレートガバナンスの体制としても先進的な体制を取っています。
 アンリツは移行の理由について3点挙げています。

1.連結海外売上高比率や(2013年度70.4%)や外国人持株比率(2014年9月末42.3%)が高い現状を踏まえ、グローバルな視点から理解を得やすいガバナンス体制を志向して企業価値の向上に取り組んできたこと
2.希少な独立社外取締役を集約し取締役会の構成員とすることで、取締役会における社外取締役の比率を高め、より一層の透明性の向上や株主の視点を踏まえた議論の活発化が期待できると判断したこと
3.監査等委員会を設置し、監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することで監査・監督機能の強化につながると判断したこと

ここで挙げられた理由を見ると、指名委員会等設置会社に移行しても同様の理由が挙げられると思います。アンリツは監査等委員会設置会社移行後も諮問員会である指名委員会、報酬委員会は継続するとしていますが、それではなぜ指名委員会等設置会社ではなく監査等委員会設置会社を選んだのでしょうか。
以下は、筆者の推察ですが、その理由は監査等設置会社が経営側にとって監査役会設置会社及び指名委員会等設置会社に比べて非常に便利な構造になっているからではないかと思います。
1.取締役に対する業務の委任の自由度が増すこと(会社法399条13、第5項、第6項)
2.常勤の監査等委員の設置義務のないこと
3.任務懈怠の推定規定の摘要がされない条件が規定されていること(会社法423条4項)
4.諮問委員会である指名委員会、報酬委員会は指名委員会等設置会社の指名委員会、報酬委員会と比べると拘束力が弱いこと
しかしながら、上記の1~3の事項はコーポレートガバナンスの面から見ると運用次第ではこの制度をかなり緩い制度にするものだと思います。つまり、監査等委員の監査が合議制であることや監査等委員の監査が内部監査に大きく依存するのでしっかりとした内部監査部門がない企業が採用するとコーポレートガバナンスもかなり緩んだものになるおそれがあります。
また、監査等の「等」が意味する「(監査等委員会の決議に基づいて)株主総会において指名及び報酬について意見を陳述する権利がある」という点に関し、監査等委員の責任をどう考えるかという問題について、相当の責任を負う可能性があるという見解もあることに注意する必要があります(山口利昭弁護士:ビジネス法務の部屋http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/)。
アンリツはおそらく常勤の監査等委員を置くと思われるし、しっかりした内部統制部門ももっておられると思いますのでそれほどの心配はないでしょうが、しっかりした内部監査部門を持たず常勤の監査等委員を置かなくも会社法の違反にはならないこの制度については、外部の眼、例えば投資家の眼から見るときはその運用の実態に十分注意を注ぐ必要があると思います。
(文責:安田正敏)

この記事に対するコメント一覧

Posted by 高松 明 - 2015年2月24日 09時15分
研究会のブログを拝読しました。
同感です。
今回の「アンリツ」の決断の背景を推し量ると、機関設計の選択として、
・外国人株主のウェイトが高いため、監査役設置会社のままであり続けるのは対外説
明が難しい
・さりとて、指名等委員会設置制度への一挙移行は踏ん切りがつかない
・その中間形態となる新設の監査等委員会設置会社は、まあ中途半端かもしれない
が、既に実運用している任意の諮問委員会等との補完・連携により足らざるところを
カバーできる
というようなことではなかろうか、思います。

以下雑感です(新制度に対する理解不足の面もあろうかと思いますが)。

聞くところでは、アンリツの意向表明により、新制度に対する企業統治関係者の
ムードは従来の懐疑的な見方から、意外と使えそう、という雰囲気に一部にせよ、変
わりつつあるそうですね。
つまり、社外役員の員数合わせのための所謂ナンチャッテ委員会ではない、という
ポジティブな評価です。

事例の状況により相応の評価があろうかと思いますが、ただ小生自身はやはり、安
田さんのご指摘通りと感じます。

つまり監査等委員会制度の有用性はそれを補完する仕組み、例えば諮問委員会(指
名・報酬)の運用実態や監査委員会と諮問委員会の職務範囲の切り分け、更には内部
監査部署の充実度や監査委員の責任範囲(取締役一般の職務プラス監査職務)など
諸々の点で、実際に導入した先の運用実態や有事におけるリーガル判断の積み重ねが
大きいように感じた訳です。>
また、その辺りがハッキリしてこないと、監査委員の責任の重さという意味で、こ
れを引受けるのは結構勇気がいるかも、とも感じました。

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