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コーポレートガバナンス・コードへの対応 ~経営者の本質的理解と積極的関与が不可欠~ 安田 正敏

2015年03月27日

コーポレートガバナンス・コードに対する対応としてまず会社がやるべきことは、自らの会社の取締役会が「企業家精神を発揮」して、かつ「株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ」て「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」を実現してきたかどうか、という点について真剣にその実績を検証して省みることだと思います。


326日木曜日、当研究会の勉強会でコーポレートガバナンス・コードの有識者会議のメンバーであった東京海上アセットマネジメント株式会社代表取締役社長の大場昭義氏に「コーポレートガバナンス・コード策定の意義と課題」というテーマでご講演いただきました。

その冒頭にコーポレートガバナンス・コードを巡る動きについて講演会等を開くと大変な数の参加希望者が申し込むという状況を説明されました。また、東証の323日から始まった説明会だけで6,000人、関係団体主催で東証の方がお話するものを含めると20,000人にも届くというような話を聞いています。筆者がある団体でこのテーマについてお話しさせて頂いた際には、参加者の1人の方が「コーポレートガバナンス・コードに対する対応についてとにかく情報を集めている」というお話も聞きました。

特に、「コンプライ・オア・エクスプレイン」のルールについては、金融庁は東証を含む関係機関にたいして「ひな型」を提供しないように求めています。実際にこの点は、コーポレートガバナンス・コードの「目的」のなかで、「『実施しない理由』の説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、株主等のステークホルダーの理解が十分に得られるように工夫すべきであり、『ひな型』的な表現により表層的な説明に終始することは『コンプライ・オア・エクスプレイン』の趣旨に反するものである。」と述べています。このような状況の中で、各企業は東証の規則として導入される原則主義に基づいた「コンプライ・オア・エクスプレイン」のルールにどのように対応するかに頭を悩ませていると推察します。

現実には、企業の総務あるいは経営企画のような部署のスタッフが上からの指図で他社の動向や弁護士、監査法人などからの情報を集めているものと思われます。しかし、ここで関心を持たれていることは「独立社外取締役を2名以上置かないことのエクスプレインはどうすればいいのか」とか「取締役会が経営幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続きをどう書けばよいのか」というような東証がコーポレート・ガバナンス報告書での「開示」を求める諸原則にどう対応するかということであろうと推察します。

これらの原則や補充原則は、枝が無ければ花も咲かないし実がならないという意味では重要ですが木の根幹ではありません。今回のコーポレートガバナンス・コードの副題にもなっている「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために」という言葉こそその神髄であると思います。「目的」においてはこの言葉の前に「企業家精神の発揮を促し」とあり、基本原則4ではこの言葉の前に「上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ」という重要な言葉がついています。

この言葉を真剣に受け取るならば、「コーポレートガバナンス・コードに対する対応」としてまず会社がやるべきことは、小手先の対応のために他社あるいは外部組織の考えに関する情報を集めることではないはずです。まずやるべきことは、自らの会社の取締役会が「企業家精神を発揮」して、かつ「株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ」て「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」を実現してきたかどうか、という点について真剣にその実績を検証し省みることだと思います。できていなければそれは何故か、どうすればそれができるかということを、代表取締役をはじめ取締役の方々が考え抜くことであると思います。できていると判断した場合でも、その成功要因は何だったのか、改善点はあるのかという点についての議論を深めるべきであると思います。そのプロセスで会社独自の対応が見えてきて株主に対する説得力ある説明も可能になると思います。そこまでやって、冒頭の大場社長のご講演の最後に提言された以下のような機関投資家から「事業会社に期待すること」に対応することができるようになると思います。

 

u  自社の企業価値について事実を投資家と共有すること

→ 過去の自社の株価推移等

u  資本コストを上回るリターンの実現に向け、「現状の課題」と「課題の解決策」に関して投資家と共有すること

u  持続的成長に向けた課題について共有できるようにすること 

→ 社外の人が理解しやすいコミュニケーション

例) ベンチマーキング、グローバル比較

 

この意味で、今回のコーポレートガバナンス・コードを実のあるものにするには、コーポレートガバナンス・コードの本質についての経営者の理解と積極的な関与が絶対的に重要であると思います。この点に関し、伊藤レポートをまとめられた伊藤邦雄教授があるセミナーでお話された日立製作所の河村会長(当時)の言葉を紹介します。正確にその通りではありませんが概要は次のようなものであったと思います。

「日立製作所の製品は一つ一つに品質保証をしている。しかし、投資家に売る株には品質保証を付けられない。従って株の品質を高めるための最大限の努力をするのは経営者の責務である。そのためにもっとも重要なものの一つがコーポレートガバナンスである。」

経営者がここまで腹をくくって取り組まないとコーポレートガバナンス・コードは絵にかいた餅になってしまうでしょう。

 

(文責:安田正敏)


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