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ガバナンス・コードと取締役会の受託・説明責任 門多 丈

2015年09月14日
東芝の会計不正不祥事の根本的な問題は、取締役会の受託責任、説明責任の認識の欠如にある。取締役はどのような考えでことに当たるべきか、役割と責任については今回導入されたコーポレートガバナンス・コードで明確に議論され、規定されている。


東芝の会計不正不祥事に関し、取締役会の構成や役員報酬などガバナンス改革案が報道されている。これらは調査委員会や経営諮問委員会の案であり、あくまで新たな取締役会でしっかり議論すべきことである。その際は経営主宰の月例会で事業計画などの意思決定をしていたこと、上からの会計不正の指示に現場が抵抗出来なかった風土、今回家電事業の大幅赤字に象徴される不採算部門見直しなどの経営戦略が取締役会で議論されなかったことなどの総括が前提にあるべきと思う。まさに取締役会の受託責任、説明責任の問題であり、今回導入されたコーポレートガバナンス・コードのメイン・テーマとして明確に議論され、規定されている課題である。


これに関し、週刊金融専門紙ニッキン・レポート7月20日号に掲載したエッセー「ガバナンス・コードと説明責任」を日本金融通信社様の承諾を得て以下に転載する。




日本版コーポレートガバナンス・コードのキーワードは、「株主への受託責任」と「説明責任」である。スチュワードシップ・コードで求められる「建設的な対話」とともに、いずれも日本の社会や文化ではあまり馴染みのない概念である。


「説明責任」は英語ではaccountabilityであるが、その意味するところは我々の理解する「説明」よりも重い。自らの組織が社会的に有用であり存在を許諾されるものであることについての、いわばその「存在の証し」としての説明義務である。日本版コーポレートガバナンス・コードの中でその最たるものは原則3-1であり、「会社の目指すところ(経営理念)や、経営戦略、経営計画」と「コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針」の開示を求められている。基本原則4の中でも、取締役会の責務として「企業戦略等の大きな方向を示すこと」と規定されている。


株主への受託責任については、基本原則4で取締役会がリーダーシップを執ることが明示されている。経営の透明・公正かつ迅速・果敢な意思決定を取締役会が「促す」こと、その意思決定過程の合理性の担保することが求められているのである。その実効を挙げるためには独立社外取締役の役割が重要であり、原則4-9で「独立性判断基準」の策定・開示が求められている。原則3-1では、取締役・経営陣幹部の指名と報酬の方針と手続きについての開示が求められている。補充原則4-11①では「取締役会全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方」の開示も求められている。


これに関連するものとして原則4-14「取締役・監査役のトレーニング」では、取締役・監査役に期待される役割・責務を適切に果たすために必要な継続的な研鑽(けんさん)・トレーニングの重要性を挙げ、補充原則4-14②ではその方針についての開示を求めている。海外の取締役研修プログラムでは、研修の骨子としては、取締役の責任、倫理、経営・事業計画に加えて企業金融が重視されている。日本版コーポレートガバナンス・コードの導入の背景には、資本の効率の課題がある。新規事業やM&Aの意思決定の妥当性の評価は、取締役・監査役の重要な責務である。金融・財務の専門家だけではなく、すべての取締役が企業金融の基本を理解しておくべきとの考えである。


コーポレートガバナンス改革での大チャレンジは、原則4-11にある「取締役会の実効性」の評価とその開示であろう。株主の受託責任を果たしているか、様々なステークホールダーを視野に入れた効果的な運営をされているか、について取締役会の説明責任が求められているのである。取締役会が活発に運営されているか(原則4-12では「取締役会は、社外取締役による問題提起を含め自由闊達で建設的な議論・意見交換を尊ぶ気風の醸成に努めるべき」とある)、基本原則4にある「経営の透明・公正かつ迅速・果敢な意思決定を、取締役会が促しその執行を適切に監督しているか」などの点で、取締役会の実効性の分析・評価が求められている。また取締役会の構成が、原則4-11で「実効性の前提条件」とされ知識・経験・能力を「全体としてバランスよく」備え、多様性にも配慮したものになっているかの説明責任が求められている。この中では個々の取締役(社内、社外とも)が職務遂行能力を適切に備えているかも評価の対象になる。コーポレートガバナンス・コードの規定では求められていないが、英国の先進的な企業などでは第三者による「取締役会の実効性評価」も行われている。





(文責:門多 丈)




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