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監査等委員会設置会社の脆弱性 ~コーポレートガバナンス・コードの形骸化につながるおそれ~ 安田 正敏

2016年03月15日
監査等委員会設置会社が、本来の目的である執行と監督の分離により業務執行の効率化を図りながら守りのガバナンスもしっかりと機能させるためには、常勤の監査等委員取締役を置くことと実効的な内部監査部門を持つことが必須です。この条件が整っていない状態で監査等委員会設置会社に社外監査役を監査等委員取締役に横滑りさせる形で移行することはまさにコーポレートガバナンス・コードの形骸化を招くことになります。
米国の資産運用会社であるRBMキャピタルが、5%以上の株式を保有する株式会社オプトホールディングの監査役移行の計画に反対を表明しました。具体的には株主総会で当移行のための定款変更の議案に反対票を投じることを表明すると同時に他の株主に対しても反対するよう呼び掛けています。監査等委員会移行に反対する理由について以下のように述べています。
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当社は、監査等委員会設置会社への移行は現行制度からの改悪にすらなりうると考えます。
・監査等委員会設置会社への移行に際し、従来の監査役がそのまま社外取締役として監査等委員に就任するという、いわゆる横滑りの人事がオプトを含め多くの企業で行われています。単に社外取締役の数をそろえるだけの安易な移行は慎むべきだと考えます。
・移行によってこれまで常勤だった監査役が非常勤となり、また、単独での調査権限がなくなるため、監査機能がかえって低下し、株主にとって不利益となる可能性があります。
・一方で、オプトにおいては移行後も引き続き社外取締役は全取締役8名中3名と過半数に満たないため、上記のような監査機能の潜在的低下と引き換えに議決権を付与することの効果に当社は疑問を持っています。
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この表明は、コーポレートガバナンスに関心を持つ人々の間でかなりの注意をひいています。ブログ「ビジネス法務の部屋」で意見発信をしている山口利昭弁護士も2回にわたってこの件に関して意見を述べられています。また、箱田順哉公認会計士と私の共著「社外取締役・監査役の実務」でもこの問題にふれています。
監査等委員会設置会社は執行と監督の分離を監査役設置会社に比較してより明確にすることで業務執行の効率性を図れるなど「攻めのガバナンス」の側面からは一定の評価はできるものの、RBMキャピタルの反対理由にあるように、社外監査役を監査等委員社外取締役に横滑りさせることでコーポレートガバナンス・コードの重要な原則である「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」(原則4-8)に容易に(又は安易に)対応できる便利な制度でもあるといえます。実際に多くの場面で、この原則4-8への対応が目的で監査等委員会に移行した会社について聞き及びます。
監査等委員会設置会社が、本来の目的である執行と監督の分離により業務執行の効率化を図りながら守りのガバナンスもしっかりと機能させるためには、常勤の監査等委員である取締役を置くことと実効的な内部監査部門を持つことが必須です。この条件が整っていない状態で監査等委員会設置会社に社外監査役を監査等委員取締役に横滑りさせる形で移行することはまさにコーポレートガバナンス・コードの形骸化を招くことになります。
この意味でRBMキャピタルの今回の反対意見表明は重要な警鐘であるといえます。

(文責:安田正敏)

この記事に対するコメント一覧

Posted by 吉利 友克 - 2016年3月30日 15時16分
このご意見に同感です。まさに危惧したことが起こりつつある、という気持ちです。この弱点補強には、監査委員等設置会社においては監査役から取締役への移行を伴う場合は、そうではない新たな社外取締役を最低一人以上追加する、とのルールを作るべきです。
Posted by 門多丈(実践コーポレートガバナンス研究会) - 2016年3月16日 13時25分
よりよいガバナンス体制を目指し、監査等委員会設置会社に移行すべきか多くの監査役設置会社での議論がされていますので、大変参考になるご提言と思います。

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