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ガバナンス・コードと「取締役会の実効性評価」 門多 丈

2016年05月30日
コーポレートガバナンス・コードの2年度に入るが、深めるべき議論は「取締役会の実効性評価」と「経営計画の策定と公表」についてである。


CGCの原則の中では「取締役会の実効性評価」(原則4-11)と「経営計画の策定と公表」(原則5-2)について多くの企業の取締役会が頭を悩ませたと聞く。特に「実効性の分析・評価の結果の開示」(原則4-11③)では、かなりの企業が「未実施」と開示している。筆者はこの二つの原則はCGCで期待する取締役の受託者責任と説明責任の「きも」であり、これで頭を悩ませることは日本のコーポレートガバナンス改革の「産みの苦しみ」であり意義あることと思う。終身雇用の、ムラの社会で「経営と執行の分離」があいまいなままに日本の多くの企業の取締役会が今まで運営されたことの反映でもあるとも思う。


「取締役会の実効性の評価」について「実施済」と開示した企業でも、各取締役に取締役会の構成、議題の事前配布、取締役会の席上で議論が十分されているかなどの項目でアンケートした結果を公表しているだけのものもある。「実効性」とは株主に対して果たすべき受託者責任と説明責任とは何なのかを、企業のミッションと戦略や企業風土・組織に思いを致しながら、取締役会でしっかり議論しているかについて評価することと思う。日本のコーポレートガバナンス改革で展望される企業価値の向上との観点でも、取締役会の貢献の可能性や現状についても検討する必要があろう。(「実効性評価」についての)「結果」の開示は未実施でも、取締役会の役割と責任についてどのような問題意識で議論しているか、その課題は何か、今後どのようなプロセスを踏んで「評価」を深めていくかの考えを丁寧に説明すれば、現時点でCGCの開示の目的は果たしているのではないか。


「経営計画の策定と公表」についてもROEなどの収益指標や中期経営計画に焦点が当たりすぎているのではないか。CGCの基本原則4では「企業戦略等の大きな方向を示す」ことが取締役の責務として規定されている。これに基礎を置き「経営計画の策定と公表」(原則5-2)の規定にある「収益計画や資本政策の基本的な方針」「収益力・資本効率等に関する目標」「そのための資源配分等の具体案」を取締役会でまずは議論すると言うことではないか。その際は自社の属する産業の構造や競争環境、今後の企業活動で想定しうる主要なリスクについての分析と認識がまずはあるべきである。また企業価値の向上の観点から自社の顧客・ビジネスのネットワークの強み、バリューチェーンの中でのポジショニング、差別化に貢献しうるイノベーションへの取り組み、などの説明も効果的である。経営計画や目標については、明確な時間軸の提示と評価の尺度となるKPI (key performance index )の開示も求められる。


(文責:門多 丈)




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