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社外取締役の評価について 後出 大

2016年07月08日
先日、某米系企業のガバナンス体制についての話を聞く機会を得た。当該社は一般的にもガバナンス体制がしっかりしている企業として有名であり、これをもって米系企業を一律に論じることはできないのだろうが、それにしてもいわゆる独立取締役が自らの役割を果す上でのコミットメントの内容の重さには改めて驚かされた。少なくてもいくつもの会社の取締役を掛け持ちできるほどの気楽なコミットメントではなく、わが国の社外取締役のあり方についても改めて考えさせられるものがあった。
わが国でもようやく複数の社外取締役の起用が必要との認識が一般化してきているが、社外取締役がいかに実質的に経営内部に入り込めるかが、今後のわが国企業のガバナンス体制の充実に不可欠であることは自明である。制度的には、従来から定着している監査役会制度のほかに、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社の仕組みも選択可能になっているが、いずれにしてもこうした委員会制度を有効に機能させるためにも社外取締役が重要な役割を果さねばならない。


その一方で、コーポレートガバナンス・コードに触れられている「取締役会の実効性評価」については、多くの会社が依然として悩ましく思っていると仄聞する。当然ながら、取締役会の実効性評価の前提には個々の取締役-社内取締役であろうと社外取締役であろうと-の何らかの評価も避けて通れない。しかしながら、とりわけ社外取締役に対してはどのように評価すればよいのだろうか。いつまでも取締役会への出席率を記載するだけでよいというわけにはいくまい。


社外取締役の評価の具体的イメージを描くのは必ずしも容易ではない。まず、個々の社外取締役の会社内における役割を予め明示し、その分野に関して取締役会でどのような発言がなされ、それが経営にどのように反映されているかをみることが肝要なのだろう。そして、そのことについて、株主は総会で質問できるし、機関投資家はIR説明会等の場で直接インタビューできるかもしれない。こうした質疑のプロセスは、会社のお定まり的な評価文章の開示とは比べ物にならないシビアな実質的評価につながると言えるだろう。


社外取締役が取締役会でそれなりの発言をするにはその裏付けの検討も必要になるであろうし、その前提となる経営実態の把握には取締役会以外の拘束時間も覚悟する必要がある。そこまでしてしかも自らの貢献度を評価される。そうしたことは従来の日本の企業風土にはなじまないことだったかもしれないし、個々の社外取締役にとっては酷な制度と感じられるかもしれない。かなりの候補者が辞退しそうである。しかし、今の日本企業に求められるのはこのような自覚を持った社外取締役なのであって、「取り敢えずいてくれればよい。」と言われて就任する「物言わぬ」取締役ではないはずである。こうした方々には早々に退場願う必要があるのではあるまいか。


評価に耐えうる社外取締役、それは何社も掛け持ちできるほど甘い職責ではないはずであり、それが当たり前の風土になって初めて、会社法やコーポレートガバナンス・コードで求められるガバナンス体制に実効性が伴ってくるものと思われる。


(文責:後出 大)



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