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株主総会を「白熱教室」に!! 門多 丈

2016年08月03日
日本のコーポレートガバナンス改革でも、いよいよ株主総会運営の「実効性」の議論をする段階に来ている。最近の注目すべき動きとして、ROEの低い会社への経営者取締役への「不信任」投票の増加、M&A戦略についての反対の意思表示、株主配当を取締役会で決議し株主総会に諮らない定款の変更を求める株主提案への多数の支持、などである。
米国シカゴ在のファンドでフレンドリー・アクティビストのRMBキャピタル(RMBC)は、(株)オプトホールディングスの株主総会で、監査等委員会設置会社への移行の議案に対し「指名・報酬委員会を伴わない監査等委員会設置会社への移行はコーポレート・ガバナンスの観点から極めて不十分」と反対の表明をし、他の機関投資家にも積極的に働きかけた。議案は承認されたが、RMBCの保有分(約5%)を含め20%の反対があった。RMBCの細水日本株式投資部長は様子見のファンドなどもあったなどとし「もう少し時間があればもっと多くの反対票を組織できた」と語る。RMBCは現在もオプト社の株式を保有し、多様な「対話」を同社経営と行なっている。

そのほかにも今年の株主総会では注目すべき動きがあった。某汽船会社の社長は長年の低収益を理由として取締役再選についての反対票が多く、かろうじて50%を超える賛成となった。某独立系石油会社は外資石油会社とのM&A構想について、創業者一族から
強硬な反対があり難航している。最も注目すべきは某メガバンクの持ち株会社の株主総会で、株主提案(提案者は著名なアクティビスと)に対し50%近くの支持があった。この提案は株主配当の決議は取締会ではなく株主総会で行なうべきとし定款変更を求めるもので、3分の2の賛成には届かなかった。

このような動きの背景には、やはり日本のコーポレートガバナンス改革が大きく働いている。特に上場企業の株主の機関投資家化の影響が大きい。東証1部上場の時価総額の上位400社の株主構成は外国の機関投資家が約30%、国内の投資家が約10%となっている。機関投資家は会社提案であろうと株主提案であろうと、受託責任の点からは是々非々で合理的に対応する。上述の某メガバンクの持ち株会社の株主提案(利益処分・配当の決議は株主総会で決議すべき)については、日本の機関投資家の社内でも「安易に反対で対応すべきではない」との議論が出たという。日本の機関投資家がスチュワードシップ・コードで自己規律を迫られたと言うことである。

コーポレートガバナンス・コードの原則1-1の「株主の権利の確保」の補充原則1-1①では「取締役会は、株主総会に於いて可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた会社提案議案があったと認めるときは、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い、株主との対話その他の対応の要否について検討を行うべき」とある。コーポレートガバナンス関連で議論のある政策保有株についても、コーポレートガバナンス・コードの原則1-4の中で「上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示する」ように求めている。コーポレートガバナンス改革の議論でも、いよいよ株主総会の実効性のある運営を検証するステージに来ているのではないか。

(文責:門多 丈)

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