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失敗続く日本企業の海外M&A ~その共通の原因とは?~ 安田 正敏

2017年04月27日
「日本企業による海外のM&A(合弁・買収)の88%は失敗している。10%は成功でも失敗でもどちらでもない。成功しているのは2%だけ」という日本電産の守永会長兼社長の言葉は、東芝や日本郵政のM&A失敗を目にすると非常に重みがあります。失敗の真の原因は経営者が合理的な判断力を喪失する結果となる様々な要因が絡み合っているようです。
日本郵政が子会社である日本郵便を通じて買収したオーストラリアの物流会社トール・ホールディングズの買収に伴うのれん減損を2017年3月期に4,003億円計上するという報道がなされています。この結果、同社の連結純損益は400億円の損失となるということです。2015年に行われたM&Aの買収金額は6,200億円といわれています。これは東芝がウエスティングハウスを買収したときの約6,000億円を上回る規模です。共通しているのは奇しくも、この2つのケースとも背後に東芝の社長と会長を務め後に日本郵政の社長を務めた西室泰三氏が背後で強い影響力を働かせたといわれています。
 一方で、日本郵政ののれん減損を報じた4月26日の日経には日本電産がドイツの家電大手セコップ・グループを1億8,500万ユーロ(約220億円)で買収するという記事がありました。この中で、永守重信会長兼社長は、「過去52回の買収で一度も減損損失を計上していない」、「日本企業による海外のM&A(合弁・買収)の88%は失敗している。10%は成功でも失敗でもどちらでもない。成功しているのは2%だけ」と語っています。また、買収戦略のポイントを「価格、経営への関与、相乗効果」として上げています。経営への関与についてはPMI(買収後の統合作業)が重要であると強調しています。
この点を考えると、東芝、日本郵政のM&A失敗の原因は西室氏だけにあるのではなく、両社とも適正な価格から大きくかい離した高値つかみ、綿密なPMIの計画を持っていなかったことが原因であると思われます。日経の報道では、日本郵政の長門正貢社長が、「不本意ながら(当時)の査定が甘かったのではないか。少し買収額が高かった」、「現地に任せ過ぎていた」と語っていたことがわかります。これは守永氏が指摘した重要ポイントと真逆な状況を示しています。
 それでは、なぜこのような非合理な判断がなされるのでしょうか。これを考えるヒントが最近出版された「経営監査へのアプロ―チ」(PwCあらた有限責任監査法人編)にありました。
ひとつは、「事業を主体的に実行するメンバーが中心になって買収から経営統合までを秘密裡に進めることが多く、他者のチェックが入りにくい」こと、もうひとつは、「相当のコストと時間を費やしてM&Aや経営統合を企画・実行してきた当事者であるプロジェクトメンバー自身が、途中で過去の努力を否定してプロジェクトを止めることが難しいため、このままではまずいとわかっていたとしても、そのまま突き進んでしまう」ことがあるからだと指摘しています。
 さらにそのうえでいくつかの阻害要因が重なり組織再編や経営統合を難しくしていると述べています。「組織再編や経営統合の阻害要因(例示)」として失敗の原因の例が示されていますので少し長くなりますが引用します。

トップの対立・暴走と混乱(不十分な討議)
「大義」のない経営統合と役職員の当事者意識の不在
過度な楽観主義・事なかれ主義・日和見主義
過去へのこだわり・プライドや根拠のない「たすき掛け人事」と「対等意識」
社風・文化の違い、経営管理制度の違いを無視した不適切な統合のペースの設定
商品や製品、サービス開発・提供に関わる業務の不統一
情報システムの統合やデータ移行の失敗
統合後の新たな役割や責任の割り当てが不明確
プロジェクトの役割・責任分担が不明確、統合の効果創出に関わる役職員の自信崩壊と責任の擦り付け合い 等

東芝にしても日本郵政にしてもM&A失敗の背景にはこれらの要因のいくつかが絡み合っていたであろうことが想像できます。

(文責:安田正敏)

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