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実録・銀行 トップバンカーが見た興亡の60年史/前田裕之著:ディスカヴァー・トゥエンティワン 書籍レビュー

2018年03月07日
富士銀行頭取、全銀協会長、ドイツ証券会長、日本政策投資銀行社長を歴任された橋本徹氏の60年にわたる金融マン人生とその間の国内外の金融と金融システムの変遷がこの本のテーマである。
橋本氏には、4月5日(木)に行われる実践コーポレートガバナンス研究会の月例勉強会でに「信仰と金融マン人生 ~企業風土と組織の舵取りについて~」のタイトルでご講演頂くこととなっている。
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橋本徹氏に実践コーポレートガバナンス研究会の勉強会でのご講演をお願いにうかがった際には、冒頭「私みたいに昔の金融マンにコーポレートガバナンスを語れるか、覚束ない」とおっしゃった。ところがこの本を読むと橋本様がコーポレートガバナンスについても多様な経験をされていることがよくわかる。

 80年代に米国の金融会社ヘラー社を富士銀行が買収し、橋本氏は買収後の経営統合のために同社に駐在された。同社の経営委員会(エグゼクティブ・コミッティー)の運営の責任者として米国のコーポレートガバナンスの基本的な考えを理解されるとともに、親会社富士銀行と米国子会社ヘラー社のグループ・ガバナンスの重要性も痛感されている。

 頭取ご就任早々の赤坂支店架空預金事件についても、銀行の社会、地域経済に対する責任の観点から対処され、経営に外部からのチェックが働く仕組みとして富士経営懇談会を設置しその委員には主婦連合会会長も招聘された。80年代のバブルとその崩壊後の膨大な不良債権の発生の背景については銀行経営のディシプリン、特に取締役会でのコーポレートガバナンスが不備であったことを総括されている。

 橋本氏の生き方を支えているのは幼少時代からのキリスト教の信仰である。ものごとの本質を見据えフェアに対処する宗教者の生き方が本書の中で示されている。住専(住宅金融専門会社)の膨大な不良債権処理を巡って、時の大蔵大臣が政治的配慮から「銀行の経営者には責任を取ってもらう」と圧力をかけたときに「大蔵省に経営者の進退を決める権限はない」と筋を通されたのも一例である。
 
 宗教者の根本には、人と接するときの思いやりとやさしさがある。海外での著名な金融マンが「日本に行くときはハシモトサンに会いたい」と言う橋本氏のお人柄の裏には、信仰の強い支えがあると感じた。

(文責:門多 丈)

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