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非上場企業とコーポレートガバナンス 門多 丈

2018年04月12日
非上場企業のコーポレートガバナンスの在り方についての議論が深まって来ている。英国政府は昨年8月に出されたコーポレートガバナンス改革案の中で、大手非上場企業についてもコーポレートガバナンス原則(「原則」)を策定すべきとした。
英国政府は昨年8月に出されたコーポレートガバナンス改革案の中で、大手非上場企業についてもコーポレートガバナンス原則(「原則」)を策定すべきとした。この指示を受けたFRC(英国財務報告評議会)のCEOも積極的に応じ、「大手非上場企業が英国経済にとって不可欠な存在であり、雇用や地域社会との関係でも公共の利益に沿って活動していることを自ら確認することは重要」とコメントした。(英国政府のプレスリリースより)

グローバル経済の中で非上場企業の占める比重は大きい。米国では社是として株式を非公開としている、ファミリーが所有している、企業投資ファンドが保有しているなど背景は多様だが有力な非上場企業が経済を支えている。欧州ではドイツなどで見られるようにニッチな分野で競争力の高い技術や商品を有する中堅企業(ほとんどがファミリービジネス)が経済の核をなしている。アジアや中南米では有力なファミリー企業が財閥を形成し経済に大きな影響力を有している。

バイアウト・ファンドなどが投資している非上場企業は「コーポレートガバナンスの優等生」と言われるが、その他の非上場企業でも自らコーポレートガバナンス改革に取り組む動きがある。特にグローバルにビジネスを展開する企業ではコーポレートガバナンス改革への取り組みが顕著である。またアジアや中南米で見られるように欧米で教育を受けた若手経営幹部がこの動きをリードしている例も見られる。これらの企業は社外取締役の招聘(へい)も積極的に行っている。

ファミリービジネスに代表されるような非上場企業にもコーポレートガバナンスは重要だ。個性の強い創業者や一族ファミリーの思いや思惑が強く経営を動かしている。起業家精神を維持しながらグローバル競争などの経営環境の変化に対応し事業を継続するかが課題である。非上場会社にとってもESG(環境・社会・コーポレートガバナンス)重視による中長期的な価値創造を目指すべきであり、企業経営者は自社の事業が中長期的に経済や環境社会にどのような影響を与えるかを常に頭の中に置いて経営をすべき時代になっている。最近米国の有力新興企業で創業者によるセクハラや差別などの深刻な不祥事も起こっている。経営者やファミリーが独断に走らないように、経営のかじ取りを監督しアドバイスする社外取締役の役割も重要になる。

ファミリービジネスでは事業承継が重要な経営課題である。日本でも適当な後継者が不在で黒字でありながら廃業する企業も多く出ている。昨秋一般社団法人日本ファミリービジネスアドバイザー協会がファミリービジネスの経営・組織・ガバナンスの課題についての講演会を開催した。ここでの大きなテーマが事業承継であった。この講演会では米国のこの分野で著名なビジネススクールの教授が講演したが、次世代への承継に関してファミリービジネスが抱えている課題として①企業家精神の維持、②グローバル化への対応、③世代間ギャップの克服、が指摘された。これらの課題の解決には社外取締役の関与が有効と思う。社外取締役が創業者経営者と事業承継する次世代経営者との円滑なコミュニケーションを助け、メンターの役割を果すことなどで世代交代マネジメントにも貢献できると思う。また後継者選定については合理的・効果的な取り進めが肝要だが、それについては講演会では「リーダーの要件の検討」、「スケジュールの作成」、「候補者についての情報収集」、「候補者の資質の査定」、「後継者の決定と周囲への周知の徹底」などのステップについて詳しい説明があった。

(文責:門多 丈)

※ 本記事はニッキンレポート(2018年3月5日付)に投稿したものです。

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