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企業不祥事と取締役会改革 門多 丈

2019年07月26日
株主総会での取締役選任についてのプロキシー・ファイト(委任状争奪)は必ずしも得策ではない。コンセンシュアル方式で会社と有力株主が協議、合意し取締役候補を提案することで、多様で有為な人材を社外取締役を確保することも考えるべきである。

企業不祥事を起こした東芝、日産自動車、LIXILの株主総会での取締役選出が注目される。東芝では「物言う株主」の推薦する社外取締役が会社提案に含まれ、日産自動車では社外取締役を3人から7名に増やすことを会社が提案し、LIXILでは会社側とCEOを解任された瀬戸氏双方から取締役案が出されている。 

いずれも一般株主は蚊帳(かや)の外にあり、候補とされる取締役の人選が妥当かの精査は残る。3社ともに今後の生き残り戦略が問われており、経営陣がどのような成長のかじ取りをするかをしっかり監督し、アドバイスできる取締役であるかが問われる。候補者のリストを見る限り経験や知見の面で、それに相応しい候補は残念ながら余り見当たらない。 

3社で再選される取締役については社内、社外にかかわらず再選の是非は丁寧に議論すべきである。東芝については未だ成長戦略を描けてないこと、日産についてはゴーン氏の横暴を阻止できず業績の深刻な低下も招いたこと、LIXILについては買収した伊子会社の極端な業績不振を経営がどう立て直すのかの監督の責任が求められる。 

株主総会での取締役選任についてのプロキシー・ファイト(委任状争奪)は必ずしも得策ではない。敵対的な株主の提案に社外取締役候補にリストされる人材の精神的プレッシャーも大きい。所謂コンセンシュアル方式(会社と有力株主が協議、合意し取締役候補を提案する)を採り、徒に委任状争奪戦とせず、多様で有為な人材を社外取締役とすることで、企業も株主も工夫すべきと思う。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2019年6月4日号「複眼」欄に投稿したものです。


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