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不正の兆候 門多 丈

2019年12月27日
企業不祥事での取締役や監査役の最大の責任は、不正の兆候を見つけた後に何もアクションを起こさなかったときに厳しく問われる。不正が起こらないような内部統制の強化や監視も重要になる。

取締役や監査役の企業不祥事での法的責任(善管注意義務)は不正の兆候を見つけた時から始まるとされる。然しながら不正に気がつかなければ動かなくてよいということではない。日常から経営の内部統制が効いているか、内部監査が然るべく機能しているかをしっかり監督する義務がある。

企業不祥事の過半が会計不正である。会計不正の典型的な手口は売り上げの過剰計上、在庫の水増し、コスト圧縮、借金隠しである。会計不正はキャッシュフローから分かる(いずれは資金が回らなくなる)と言われる。社外取締役には、会計の基礎知識が不正の予防の点からも必要と言うことである。 

企業風土の見極めも重要である。東芝、スルガ銀行、かんぽ生命などの企業不祥事は、業績至上主義の上意下達のノルマが原因である。他社の不祥事が起こったときに、取締役会で自社ではそのような企業風土になっていないか議論をすべきである。

 ビジネスモデルが大きく変わったときも要注意である。スルガ銀行事件では銀行業務の軸が個人向けの投資不動産や賃貸アパート融資へと大きくシフトし、現場で不正が起った。かんぽ生命は従来は文字通リ簡易な保険を販売していたが、手数料狙いで複雑な保険商品を手掛け、そこが不正の温床となった。取締役、監査役は新しく手掛ける事業についてはリスク・フォーカスでしっかり議論すべきである。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2019年9月30日号「複眼」欄に投稿したものです。


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