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ROE再考 門多 丈

2020年09月04日
アフターコロナの環境では長期的な 企業価値の向上を重視する必要がありますが、ROEに過度の重点を 置いた企業経営や業績評価には問題があると感じます。経営の意思決定の基準として、CAPMで算出する資本のコストにどこまで 依拠すべきかの問題もあります。

コロナ禍で投資家は当面業績評価にROEを使用しない。借金をしてまでROEを上げるため自社株買いをした米国企業は窮地に陥っている。経営評価や投資の尺度としてのROEの重要性が相対化している。 

長期的な株式投資家からは、ROEが単年度の収益尺度であることに問題がある。ROEの比較の対象となる資本のコストも疑問だ。資本のコストは資本資産価格モデル( Capital Asset Pricing Model, CAPM)で、株式流通市場全体の株価の価格変動率(ボラティリティ)と個別株価のそれとの差をリスクと勘案し資本のコストは算出される。現在のように思惑で日々大きく動く株式市場のボラティリティで資本のコストを測るべきであろうか。企業経営として戦略、企業計画の判断基準に、このような資本コストを使用すべきかは疑問だ。 

現在でも株価形成の要因の大部分は,非財務情報と言われる。コロナ後は機関投資家のサステナビリティ重視の姿勢は強まる。E(気候変動)、S(社会から認められる存在)とG(従業員などステークホールダー重視)への一層の配慮を求める。現在とは逆に、投資判断に際しては足元では定性、将来は定量(キャッシュフロー創出力)で企業評価をしていくべき時代になるのではないか。その意味でも企業の統合報告書での開示や、投資家との「対話」が鍵になるであろう。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞8月4日号「複眼」欄に投稿したものです。


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