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ドコモ完全子会社化の先は? 門多 丈

2021年01月15日
NTTのNTTドコモ完全子会社は、子会社上場の問題解消にはなるが、そのプロセスはコーポレートガバナンス上は疑義がある。NTTがGAFAのような情報プラットフォーム・ビジネスを狙うとすると大胆な企業改革が必要である。

既に66%を株式所有しているNTTが、4兆円もの資金を使ってドコモを完全子会社化する必要があったのか。NTTはこの資金を5G関連などの技術投資に使うべきではなかったか。これらの点について、NTTは株主に対して説明責任がある。 

完全子会社化についてのNTTとドコモのトップ記者会見は、コーポレートガバナンスの点からは違和感があった。TOBに入る前の段階であり、利益相反の点からは両社の少数株主にとっては売り手と買い手の関係がある。この段階でのあたかも取引が実現したかのようなトップの共同会見は、その配慮が感じられない。 

NTTGAFAと対抗するラットフォーマーを目指すというが、通信・電話のしがらみからどう脱却するか、サービス・プロバイダーとして顧客に様々な情報・サービスを提供するビジネスモデルへの変革は簡単ではない。オープンアーキテクチュアの企業風土を変えていく必要もある。 

ドコモ完全子会社化は「民営化」の逆行である。我が国の政治、産業、教育などのDXの課題は大きく、グローバルな5G競争や米国や中国に対抗するために、NTTを軸に情報技術の国家戦略を遂行する必要があるとの議論はありうる。GAFAやアリババは国家戦略から生まれたものではない、あくまで社会や顧客のニーズから自発的に発生したビジネスであり、その成長は資本市場が支えた原点を見失うべきではない。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞1月18日号「複眼」欄に投稿したものです。


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