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米国株式バブルの象徴「空箱会社」 門多 丈

2021年05月13日
SPAC(空箱上場会社)については日本への導入についての議論が始まっています。新興企業への投資の機会を個人投資家に提供する手段になるなどの議論がありますが、株式公開時の不透明性など金融商品としては疑問で、米国株式バブルの象徴とも言えます。

米国株式市場ではSPACの株式公開(IPO)が活発で、M&Aブームも牽引している。SPACは未上場会社を買収する特別目的会社で、IPO時には買収先が未定のために「空箱会社」と呼ばれる。未公開会社への投資(PE)の機会を個人投資家に提供するとか将来有望なAIなどのビジネスに資本を提供できる好商品とも言われるが、金融商品としての不透明性は高い。上場の要件を満たしていない企業をSPACが買収することで、「裏口上場」させているとの批判もある。

SPAC上場時はBSPLもない状況で、投資家はSPAC 創設者の投資手腕に賭けるのみである。PEファンドの募集の際は、投資家に向けて投資戦略・手法の精査、過去の運用実績の分析などの説明があり、過去の投資のトラック・レコードのdata roomでの閲覧も可能だ。SPACには買い戻し条件での投資家保護もあると言うが、緊急時に流動性があるかは疑問だ。

SPAC創設者には、買収が実現すると多額の株式報酬を支払う方式も問題だ。良質の投資を行うよりも、まずは買収実現をめざすモラル・ハザードになりうる。ガルブレイスはバブルの象徴として、斬新な金融技術(実は斬新でなくても)の出現があると分析している。リーマン危機は証券化商品やデリバティブで引き起こされたが、今回の米国の株式バブルの崩壊はSPACが引き金にもなりうる。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞4月13日号「複眼」欄に投稿したものです。


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