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SBISLと損失補填 門多 丈

2021年07月09日
SBIソーシャルレンディングの太陽光発電事業などへの巨額な不正融資は、同社の取締役会の内部統制、リスク管理の不備により起こった。クラウドファンディングでの投資ファンドの出資者には「元本償還」をしたが、実質的には元本補償であり疑義がある。

SBIソーシャルレンディング(SBISL)の不正融資は、クラウドファンディングの意義を損なうものでもあり看過できない。既存ファンドの返済資金の迂回融資のために、資金使途の「虚偽表示」により新たにファンドを募集するなど、第二種金融商品取引業者としての重大な違反行為を繰り返していた。 

SBISLの「調査報告書」を読むと、問題を起こした太陽光・不動産事業会社一社へのSBISLへ貸付は残高の40%を超えていた。貸し付けの担当は一人で、与信審査やモニタリングは出来ていなかった。貸し付け先の異常な偏在や管理業務体制の不備について、SBISL の取締役会の監督責任が問われる。「調査報告書」では社長のワンマン、株式公開を目指しての業績・利益至上主義も指摘している。SBISLの取締役会はそのような経営の姿勢や企業風土の監督をしていなかった。しかし、「調査報告書」は取締役会のガバナンス不全について一切触れていない。 

SBISLは問題ファンドの「未償還元本相当額の償還」を行い、その原資はSBIホールディングス(SBIH)が出すとのことである。実質はファンド投資家への損失補填である。SBIHの取締役会では145億円にも上る「損失補填」の妥当性を,どのように議論したのであろうか。グループ子会社の内部統制監督不備の責任として、SBIHの株主が損害賠償を請求することにならないか。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞6月7日号「複眼」欄に投稿したものです。


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