情報化と文理融合 門多 丈
2021年10月13日
DXは単なるデジタル・IT化ではなく、激変する中で顧客のニーズを読み取り新しいビジネスモデルを構築する試みである。そのためには企業経営のレベルでの文理融合、リベラルアーツの素養が重要となる。
デジタル化やAIの流れのなかで技術ユーフォリアの雰囲気であるが、スコット・ハートリー著「ファジー・テッキ―;イノベーションを生み出す最強タッグ」(東洋館出版社)では新しい技術を開発するには、文系と理系人間がともにリベラルアーツの素養を持ち協力する必要があると論述する。シリコンバレーの企業を例に、起業家やCEOには文系が多く、アカデミック・バックグラウンドは哲学、倫理学、人類学、心理学、社会学、国際関係論など多様で、博士号(PhD)の取得者も多いことを紹介している。
激変する環境の中で社会や顧客のニーズを的確に掴み、それに相応しい商品やサービスを提供するためには、独りよがりの技術開発にならないようなリベラルアーツのセンスが必要ということである。医療の電子化でも人間的な要素が重要であり、糖尿病を例に挙げ高度なデータ分析とともに適切なカウンセリング、患者同士の支え合いとの組み合わせが効果を発揮するとする。
著者は無意識にスマホを開き情報を取る習慣を、小銭を入れ続けるスロットマシン中毒とし、デジタル化の弊害も警告する。SNSでのフェイク・ニュースの氾濫、検索データを利用した広告で消費を巧妙に誘導する仕組みも要警戒である。デジタル化の流れの中では、人間に寄り添う技術開発、ビジネスモデルが必要なのである。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞9月7日号「複眼」欄に投稿したものです。
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