人的資本経営とリスキリング 門多 丈
岸田首相は新しい資本主義での人的資本経営の重要性を説くが、現下のインフレの下で喫緊の課題である賃上げに関しては「経営の余力がある中で」としか言わない。国連の世界幸福ランキングも先進国では最低と評価されている。「従業員を育てて充実感を持たせ、その周囲にも目を向けていく」(ユベール・ジョリー著The Heart of Business,英治出版)人的資本経営の考えからは程遠い。賃金は短期的な経費ではなく、企業価値向上のための投資との発想も希薄である。取締役会でしっかり議論すべき課題である。
「人的資本経営伊藤レポート」では、リスキリング戦略について3つのステップを示している。企業の戦略と人的資本戦略の整合性の検証、両戦略の間のギャップの分析、ギャップを埋めるための立案である。ギャップを埋める方策は、リスキリングと外部からの専門家の雇用である。人材の流動性が高く労働市場が充実している米国でなぜ取り組まれているかを理解するのが有用である。
ウォールマートは、アマゾンが良品スーパーのフォール・フーズを買収したことに危機感を持ち、店舗ビジネスに加えてネットでの販売、配達のビジネスモデルに大胆に切り替えた。経営のトップからオペレーションの現場までのDXに取り組んだが、労働市場からの人材の調達は不可能と判断しリスキリングを活用した。リスキリングが従来の社内での人材育成政策とは根本的に違うことの認識が重要である。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞「複眼」11月14日号に投稿したものです。
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