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企業価値と株価 門多 丈

2023年01月31日
企業価値を継続的に向上させることが企業経営とコーポレートガバナンスの目的である。明確な戦略、差別化の働く事業、適切な経営資源の配分とリスク管理で高い企業価値は形成され、投資家によるその信任の証が株価となる。

企業価値を継続的に向上させることが企業経営の責任であり、その執行を監督するのが取締役会である。「企業価値と言っても漠然としてわからない」、「株の時価総額とどう違うのか」との疑問がある。企業価値は将来発生する(ネット)キャッシュフロー集合の現在価値と考えられている。 

企業経営が戦略的意思決定と適切な経営資源の配分による事業を遂行しているかを評価するのが企業価値であり、フォーワード・ルッキングの発想である。現在価値の算出のための割引率(資本のコスト)を低下させるためには、全社的なリスク管理を充実し、市場の信認を得ることも経営課題となる。その点では商品・サービスの競争力、知財、人的資本、ESGの取り組みなどの企業情報の開示が重要である。これらは「非財務情報」と呼ぶのが通例であるが、企業価値を形成する重要な要素に関わる面からは正しくは「将来財務情報」と呼ぶのが適切であろう。 

企業経営は(短期に揺れ動く)「株価を睨んだ経営」をすべきではないとの意見がある。ケインズは企業価値とは地面に立っている杖で、株価はそれが地面に投影されたものであると評した。影の長さは太陽の高さで変わるということである。この比喩は、しっかり経営することで杖の高さを上げるとともに、適切な企業財務広報と投資家との対話を行うことで「影」の長さも延ばす企業経営の責務を見事に示唆している。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2022年12月13日号「複眼」欄に投稿したものです。


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