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PBRを上昇させるには 門多 丈

2023年04月19日
東証から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」などをタイトルとする資料が公表された。PBRの向上を促すものである。

プライム市場上場企業の約半数がPBR (株価純資産倍率)が1割れであることを背景に、東証は当該企業に改善策の開示を求める方針である。

PBRは株価が資本(簿価)をどれほど上回っているかを表わす指標である。PBR1以上になるためには、企業経営が投資家に対して成長戦略を明確に示す必要がある。それに関しては次のような視点が有効である。バックキャスティングでの経営計画で将来の収益を予想し、その割引現在価値である企業価値を計算する、次には無形資産を形成する戦略を深めることで、具体的にはブランド、研究開発費も含む知財、営業権、役職員のトレーニングや研修費用も含む人的資本などバランス・シートに計上されていない資産に積極的な先行投資を行う。これらを踏まえ、自社の企業価値が株価に適切に反映されるように、統合報告書などでの非財務情報(将来財務情報)の開示や投資家との対話を積極的に行うことが重要になる。 

地銀のPBRが著しく低いことも話題になる。金融システムの要として預金・決済の機能の維持、地域のための支店網の保有など観点から、資本を厚くしておく必要や流動性の確保(米国シリコンバレー銀行のような「取付けリスク」も潜在する)の義務は大きい。地元経済が高齢化や少子化で成長が難しく、収益性の高い海外業務を取り込みにくい問題もある。地銀は地域経済のプラットフォーム機能を持ち、多様なサービスを提供できる優良企業であり、配当政策で株主の投資リターンを魅力的なものにすることや、地元の個人の株主を増やすなどの資本政策を磨くべきである。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2023年3月22日号「複眼」欄に投稿したものです。


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