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米国のコーポレートガバナンス改革も道半ば 門多 丈

2024年05月13日
米国での年金会議では、投資家の立場から『米国の社外取締役も十分役割や責任を果たさず、勉強不足』との批判の声があった。
先月カリフォルニアでの年金会議に出席した。欧米、アジアの公的年金の集まる会議で、米国金利上昇の投資環境やインフラ、天候異変などのサステナ投資、イスラエル・ハマスの中東情勢が議論になった。「もしトラ」の深刻な議論はなく、米国第一主義を良しと思っている人も多いのではと思った。今後バイデンであれトランプであれ、米国の貿易保護主義、移民などの制限が強まる素地が米国にはあると感じた。

米国のコーポレートガバナンス(CG)のセッションでは、米国の企業向けCGコンサルタントから辛口の発言があった。CEOのリーダーシップ(変化に適応できていない)とboard performance(取締役会の実効性が不十分)に不満との考えで、社外取締役に対してもflexibilityとknowledgeが不足している、取締役会でどんどん質問して学習すべしとの指摘であったが、いずれも日本と同じ課題であり驚いた。

出席の年金関係者にこのような発言の背景を聞いたところ、パッシブ運用中心で多くの米国企業に投資しており、年金基金などの機関投資家は個別企業のCG改善には中々手が回らないと本音を語った。「リーダーシップのないCEOは、(指名委員会が動いて)首を据え変えればよいのでは」と聞いたところ、そんな簡単な話ではなく、まずは経営陣と取締役会の双方と根気強い「対話」のステップを考えるべきとのコメントがあった。

最近のディズニーの株主総会での委任状争奪戦を見ると、米国の企業経営者や取締役会が、本当に株主重視の姿勢があるかは疑問だ。同社はアクティビストに「対抗」するために4000万ドル(60億円)の意見広告を行った。経営陣の保身のためではないか。取締役会でこの出費の妥当性をどのように議論したのであろうか。そもそもこの総会が昨年9月末の決算から6ヶ月経った今月に開催されたことも、日本ではありえないことである。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2024年4月25日号「複眼」欄に投稿したものです。

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