企業不祥事と社外取締役の責任 門多 丈
2024年06月25日
不祥事を根絶するには経営の姿勢 と覚悟が大事であり、社外取締役・監査役には それを監督・監査する重要な責務がある。
損保ジャパン、トヨタグループなど、日本の錚々たる大企業の不祥事が頻発している。いずれもワンマン経営で利益・期日厳守至上の企業風土で現場の実状を把握できていない問題が背景にあるが、その後の対応も十分とは言えない。新しい社長になっても、従来の経営陣の一員であった仁がどのように経営を刷新し企業風土を変えられるのか、再発防止策が本当に有効なのか外からは納得できるようなものではない。
この点では社外取締役の責任は大きい。新社長の選任に指名委員会がどのように関与したのか、第三者委員会の調査報告書をどう検証し評価しているのか、再発防止策が本当に機能するのか、については第一義的に社外取締役に説明責任がある。特に第三者委員会の調査では、自らの責任(善管注意義務)も問われていることも自覚すべきである。
最近は内部通報により問題が発覚することも多い。不祥事の傷を浅くする善意の動きと考え、社外取締役は内部通報の妨害や通報者が社内で不利な扱いがされないように監視するのも、社外取締役の責任である。不祥事の原因を深堀りし、戦略的課題を提起するのも社外取締役の責任である。例えば品質検査の不正で類似の問題が発生するのは、個別企業に事業規模の問題があり検査部門に十分な人的資源を配置できない経営上の問題があるのではないか。その場合、社外取締役は事業ポートフォーリオの見直しや、事業再編、同業他社との合併などの検討を促すべきである。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2024年4月25日号「複眼」欄に投稿したものです。
- at 18時32分
- | コメント(0)
- | トラックバック(0)
こちらのURLをコピーして下さい