有報は株主総会前に開示すべし 門多 丈
大和総研のレポートでは2024 年 3 月決算会社(東証上場)2,190 社のうち有価証券報告書(有報)の株主総会前提出を実施していたのは 40 社にとどまったとある一方、奇妙なことに定時株主総会開催日当日および翌日に有報を提出したのが 1,911 社(全体の 87.5%)とある。今年のセブン&アイの役員報酬開示では、会社法での開示(単体ベース)と株主総会の後に出された有報での開示(連結ベース)で、役員報酬額があまりにも違う(後者が1桁大きい)のには市場関係者は強い違和感を持った。
株主総会は事業の環境や今後の戦略と当該期の経営執行のパフォーマンス評価を踏まえて、役員改選、報酬などを審議し決議する場であり、その判断に必要な情報がかなり含まれる有報は総会前に株主に開示すべきであり、社外を含めて取締役は有報での開示を十分理解したうえで総会に臨むべきである。総会前の有報の開示とするために、基準日を変えて総会の開催を現在より遅らせるアイデアが出ているが、コーポレートガバナンスの観点からは論外である。
企業経営はデジタル化を活用し、数字やデータの把握の効率化に勤め早期的に開示するのが筋である。有報での記載項目が増えている非財務情報は、会計監査人の直接の監査対象ではないのであり、企業は決算前に前広に準備する工夫をすべきである。会計監査人も会計監査とともに、有報の重要な監査項目である内部統制の監査を並行して行うことや、デジタル化を活用し監査の効率、迅速化に努力めるべきである。会計監査の不要な任意の開示である統合報告書は、開示項目が充実しており、株主総会の審議に活用できるように前広に開示する努力も期待する。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2024年8月30日号「複眼」欄に投稿したものです。
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