ブログ詳細

ESGの旗を降ろすな 門多 丈

2025年05月21日
トランプ政権の誕生で、天候異変問題や多様性についての逆風が吹いており、欧州を含めて様子見の雰囲気にあるが、サステナビリティ経営の企業価値の長期的、継続的成長の観点からは、ESGやDEIの旗は降ろすべきではない。

トランプ政権の出現で、米国のESGDEI(多様性、平等、包摂)への逆風は目を覆うばかりだ。米連邦通信委員会(FCC)は、米娯楽大手ウォルト・ディズニーと傘下の米放送局ABCを、DEIの取り組みを巡り、雇用面に「悪質な差別」が発生している可能性があると調査すると発表した。米国企業も腰が引けている。米国の金融トップ(JPモルガン、シティ、ブラックロック)が、そろってESG、ダイバーシティについての後ろ向きの発言をしている。ウォールマートは、HPでのDEI取り組みの説明を外した。友人からの報告では、米国で先日開催されたエネルギー会議では、水素、Climate Change, Renewables, EVという言葉は使わない方が良いと言う事前注意が流れたとのこと。

三井住友FGなどの国際的な脱炭素枠組み、ネットゼロ・アセットマネージャーズ・イニシアティブ(NZAM)からの脱退であるが、NZAMに入っていることをカルテル行為であるとしてトランプ派により訴訟されるリスクや米国内での融資活動への妨害もありうる中での、苦渋の判断であった。これについて、新聞では当初は「脱退」のみで大騒ぎをし、上記のような背景や、国際的なインパクなどを考慮した報道ではなかった。調査し報道すべきは、日本企業のESGDEIについての本気度ではないか。これを機会に各企業の取締役会で、改めてサステナビリティ経営の意義について議論すべきである。

多様性は企業の経営判断、イノベーション、リスク管理を効果的に行い、長期的な企業価値向上を目指すための仕組みである。トランプ関税の中で不確実性が増加している中での企業経営の舵取りのためにも、多様性と柔軟性が重要となっている。人的資本経営の成功にもDEIが必須である。米国の有力企業の株主総会でも、ESG(特に気候変動)とDEIの旗を降ろすことには反対の声が株主から出ている。欧州の対応など状況の見極めは難しい面があるが、NZAMの呼びかけ人のカーニー氏がカナダの首相になったのは朗報でもある。日本の企業経営者も、米国の出張の際はSDGsバッジをつけて、堂々と出かける気概を持ってほしい。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2025年4月23日号「複眼」欄に投稿したものです。


この記事に対するご意見・ご感想をお寄せください。

この記事に対するトラックバック一覧

サイト名: - 2025年5月27日 04時38分

タイトル:
内容:
URL:/blog/blog_diaries/blog/blog_diaries/receive/354


こちらのURLをコピーして下さい

お問い合わせ先

一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

ページトップへ