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PBR1割れの豊田織機TOB 門多 丈

2025年07月17日
豊田自動織機のTOBはトヨタグループ会社による政策保有株の買い戻しの目的で行われるが、グループ間の取引でもあり、TOB価格が妥当か、買い手・売り手双方の取締役会はしっかりチェックすべきである。TOB成立後少数株主はスクイーズアウト(強制買い取り)されることになる点からも独立委員会の責任は重い。

豊田自動織機の非公開化のTOBは、トヨタグループ再編の狙いと思うが、グループ企業間の密室の取引で、関係各社の少数株主の権利が保護されないリスクがある。各社は特別委員会を設け、透明性の高いプロセスをとるべきである。社外納得できないTOB価格であれば、差し戻す毅然とした態度で臨めるかで、取締役の真の独立性が問われている。 

この間豊田自動織機の株価は上昇して来たが、それでもPBR1.0程度でしかない。その11%ディスカウントでのTOBでよいのか。株主総会で豊田自動織機の伊藤社長は、このTOB価格は同社の「本源的価値を反映」と株主総会で説明したが、自らは企業価値向上の展望がないことを吐露したということにならないか。豊田自動織機のみならず、TOBに応じて豊田自動織機株式を売却するトヨタやトヨタグループは、自社の少数株主の利益を守るためにそれぞれ特別委員会を開き、外部専門家のアドバイスを得て、多様な角度からTOB価格の妥当性を審議すべきである。トヨタとグループ各社がTOBに応じた場合、残りの株主はこの低いTOB価格でのスクイーズアウト(強制買い取り)をされるのである。

 安易なTOB価格の設定は、将来の訴訟リスクをもたらす。伊藤忠によるファミマの完全子会社化の場合、ファミマの特別委員会が外部の専門家から入手した評価額よりTOB株価が低いにもかかわらず買収を受諾した。ファミマの少数株主から訴えられ裁判所が「適正買収株価」を判断し、伊藤忠は敗訴した。

 本件はトヨタ陣営によるTOBと報道されているが、受け皿になる買収元株会社(SPC)は豊田章男氏個人と章男氏が会長である豊田不動産が普通株を持ち、トヨタ自動車は優先株しか持たない構造になっている。SPCのコントロールやガバナンスの面で不透明性があり、章男氏の「院政」にならないか危惧する。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2025年6月23日号「複眼」欄に投稿したものです。


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