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M&A「のれん」の適切な評価を 門多 丈

2025年09月30日
M&Aの経営の意思決定の妥当性の検証と投資家への適切な財務情報の提供の観点からは、M&Aの「のれん代」の評価は毎年行うべきである。

成長戦略の中でM&Aの重要性を増すに従い、「のれん」(買収価格と被買収企業の純資産との差額)がB/S資産に占める比重が大きくなっている。「のれん」の扱いについて、日本の会計基準(20年以内の定期償却)とIFRS(減損テスト)の違いで議論が活発化している。いずれの基準にも実務上の問題がある。日本基準は保守主義の立場からM&A直後から償却が始まり、費用として営業損失が発生することで、足元の収益の低下を気にして企業経営が戦略的な買収を躊躇する問題が指摘されている。IFRSはのれんの経済価値に着目し、それが大きく棄損した場合に減損処理を行う考えであるが、企業経営が早めの損出しを躊躇する可能性があり、株主や投資家には巨額な損失が突然公表される懸念がある。 

投資家や株主に適切な財務情報を提供する考えからは、のれん代が毎年適正に評価されることが重要であり、時価評価が最適な対処と思う。市場で適切に比較できる対象が少ないことや、M&Aに伴う戦略プレミアムが含まれていることで、のれん代の時価の算定は難しい。現在IFRSで採用されている減損テストの手法を活用するのが、現実的であろう。具体的には、当初M&Aの買収価格を計算する際に使用した事業計画の諸条件(買収シナジーを含めた収益、キャッシュフロー、資本のコスト)を毎年レビューし企業価値を再計算し、のれん代の評価替えを行うことを提案する。その際の評価損益は特別損益または包括損益で処理するのが妥当ではないか。 

「のれん」の評価には経営者による恣意的取扱いのリスクがあり、これは取締役会や監査役会が厳密に監督、監査すべきである。このプロセスの客観性を担保するには、特に社外取締役の役割と責任は大きい。

※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2025年8月25日号「複眼」欄に投稿したものです。


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