SBI新生銀の再上場はマネーゲーム 門多 丈
2025年11月04日
SBI新生銀行の再上場が予定されているが、非上場時のプロセスの不透明さと非上場後のガバナンスの欠如についての総括をまずはすべきである。
SBI新生銀行が今年中にも再上場を計画していると聞く。目指す時価総額は1兆5000億円から2兆円超とのことで、2年前の同行の非上場時の時価総額5671億円の3倍強になる。同行の非上場の目的は、公的資金の「返済」のためのからくりであったのではないか。
SBIグループ内で複雑な資金のやり取りをして、非上場時の買い取り価格の3倍での「返済」をしたようだが、このプロセスについてコーポレートガバナンス上の監視が十分機能していたとは思えない。スクイーズアウト(強制買い取り)された少数株主は、買い取り価格を著しく上回る再上場には不満を持つであろう。特に同行の特別委員会では、非公開のTOB価格が低いとの意見もありながら大株主のSBIグルーブが押し切った。あらためて非公開のプロセスが妥当であったか検証すべきである。SBIグループは再上場時に保有株式を売り出すとすれば、このマネーゲームで巨額のキャピタルゲインが手に入ることとなる。
この事例が明らかに示すように、TOB価格については特別委員会で独立取締役が、少数株主保護の観点からしっかり監督し、議論すべきことが明らかになる。現在進行中の豊田自動織機の非上場化にも同じような疑念がある。東証は上場規制の行動規範で、TOBや支配株主による完全子会社化等については「特別委員会からの意見入手や株式価値算定の概要」などの十分な情報開示を求めている。
ファミマの伊藤忠のTOBに関しての株価認定の訴訟においては、特別委員会の議事録の開示を求められ、大株主の伊藤忠の圧力でTOBの価格が独立取締役の考える価格よりも低くされた経緯が明らかになった。特別委員会でのTOB妥当性についてどのように議論されたかの監視が厳しくなることを覚悟すべきである。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2025年9月22日号「複眼」欄に投稿したものです。
SBIグループ内で複雑な資金のやり取りをして、非上場時の買い取り価格の3倍での「返済」をしたようだが、このプロセスについてコーポレートガバナンス上の監視が十分機能していたとは思えない。スクイーズアウト(強制買い取り)された少数株主は、買い取り価格を著しく上回る再上場には不満を持つであろう。特に同行の特別委員会では、非公開のTOB価格が低いとの意見もありながら大株主のSBIグルーブが押し切った。あらためて非公開のプロセスが妥当であったか検証すべきである。SBIグループは再上場時に保有株式を売り出すとすれば、このマネーゲームで巨額のキャピタルゲインが手に入ることとなる。
この事例が明らかに示すように、TOB価格については特別委員会で独立取締役が、少数株主保護の観点からしっかり監督し、議論すべきことが明らかになる。現在進行中の豊田自動織機の非上場化にも同じような疑念がある。東証は上場規制の行動規範で、TOBや支配株主による完全子会社化等については「特別委員会からの意見入手や株式価値算定の概要」などの十分な情報開示を求めている。
ファミマの伊藤忠のTOBに関しての株価認定の訴訟においては、特別委員会の議事録の開示を求められ、大株主の伊藤忠の圧力でTOBの価格が独立取締役の考える価格よりも低くされた経緯が明らかになった。特別委員会でのTOB妥当性についてどのように議論されたかの監視が厳しくなることを覚悟すべきである。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2025年9月22日号「複眼」欄に投稿したものです。
- at 11時35分
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