ニデック会計不正の闇 門多 丈
ニデック社の会計疑惑に関する企業開示は奇怪だ。会計監査人であるPwCジャパンは、同社の財務報告に係る内部統制について「十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった」として、適正かどうかの意見を「不表明」とした。有価証券報告書ではイタリアの子会社の貿易取引上の問題や中国子会社の源泉所得税の過少申告を重要な「不備」として説明している。一方「不適切な会計処理の疑義」に基いて設置した第三者委員会の調査目的には、「会社及びグループ会社の関与または認識の下で、資産性にリスクのある資産に関する評価減の時期の恣意的な調整」を挙げている。同社による牧野フライス社への「同意なき買収」攻勢も話題になったが、これが不調になった後に担当役員が辞任している、会社として意思決定し動いたのであり個人にだけ責任を取らせたのであれば問題だ。
会計不正がニデック社の子会社だけではなく本社でも発生し、経営陣も絡んでいるとなると経営陣の内部統制の無効化の疑惑になり、同社の株式上場の是非にも繋がりうる重大な問題となる可能性がある。「資産に関する評価減の時期の恣意的な調整」とあるが、現状では憶測に過ぎないが同社の総資産の4割近くを構成する「棚卸資産」、「無形資産」「(M&Aに関する)のれん」に関するものであろう。「棚卸資産」であれば陳腐化した在庫製品を減損処理すべきところを怠った、「無形資産」については資産化できない研究開発費やライセンスを計上した、「のれん」については当初の買収計画通りに買収先の業績が実現しなかった場合に減損処理を行わなかったことが考えられる。
このような資産についての会計不正であるとすると、巷間噂のある同社の営業利益至上主義と攻撃的なM&A戦略に関係する問題と思う。特に「のれん」の処理については、M&Aで「連戦連勝」を誇る創業者への忖度があったとも想像しうる。同社は創業者の強力なリーダーシップで、モーターと駆動技術を軸に事業の垂直統合、水平展開を大胆なM&A戦略で図り躍進をしたが、このような重大な不正会計が発生した背景には、ワンマン経営の閉鎖的な組織と企業風土の根深い問題があると思う。第三者委員会にはこのような組織風土の問題についても解明する責任がある。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2025年10月29日号「複眼」欄に投稿したものです。
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