人間とAIの「共創」が理想的 門多 丈
2026年06月29日
生成AIの進歩は驚異であるが、人間の脳の進歩には追いついていない、感情や意思を持つのはこれからである。人間がリードしてAIと『共創』することが課題となる。
マックス・ベネット著の「知性の未来」(新潮社)では、魚のような脊椎動物が脳を持ち始めた頃からの人間の脳、思考、感性の歴史を詳述している。著者はAI企業の創業者とのことで、AIとの比較の面で人間の脳の機能や意識に興味を持ったのであろう。脳ができる前はバクテリアのように触覚のみがありこれで行動していた。有名なロボット工学者が、このようなバクテリアと同じように、センサーを使いながら動く仕組みでルンバを発明したのは興味深い。生物が進化する中で、行動を効果的な「操縦」するためにニューロンが増加し、繋がりが複雑になり脳が形成された。
本書では生物が(魚のような)脊椎動物になってから様々な感覚で外部情報を取り込み、想像、予測を行うようになり、感情や意識が生ずるようになった経緯が詳しく書いてある。人間の脳では、電気の信号で情報を伝えるニューロンと化学物質で繋ぐシノプスで巨大なネットワークを形成し行動する。その点からは、デジタルのみでネットワークを形成するAIが、人間の脳と同一なものになれるかは疑問だ。身体を動かし多様な感覚を使うことで進化してきた人間の脳の発達を、AIがどのようになぞれるかが大きな課題であろう。
今更自動車と競走する人間はいないように、AIと人間のそれぞれの強みを活かす仕組みが必要である。人間の脳や意識も外部の情報を取り込み(ヴァーチャルで共有することで)、集団で「行動」する中で発達してきた。人間と脳がヴァーチャルで思考を共有し共創するのが理想的である。その場合も判断と意思決定は人間が主導権を維持することが大事と思う。
※ 本記事は金融ファクシミリ新聞2026年5月25日号「複眼」欄に投稿したものです。
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