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シャープ「銀行管理」にもの申す 門多 丈

2013年05月23日
シャープの経営刷新に当たって、みずほコーポレート銀行と三菱UFJ銀行から財務と経営企画を担当する取締役が就任の予定という。株式公開会社であるシャープの経営の中枢に銀行が役員を「派遣」することには、著しい利害相反の問題がありコーポレートガバナンス上も看過できない。

シャープの社長の1年での交代は異常だ。経営危機の原因は堺と亀山のディスプレー工場への巨額な投資にあるが、経営の混乱の裏には町田元社長と片山前社長との確執(多頭体制)にある。現在まで経営のガバナンスが機能していないのは明らかである。今年3月期は5453億円の最終赤字で、液晶ディスプレーなどの電子部品事業の営業赤字は1590億円であった。シャープ経営陣は2014年3月期については、液晶事業の外部販売の拡大で50億円の最終黒字を目指すというが、計画の達成は覚束ない。


シャープの今回の経営刷新に当たっては、看過できない役員人事がある。主力行のみずほコーポレート銀行と三菱UFJ銀行が、それぞれ財務と経営企画を担当する取締役(2名)を派遣する予定とある。東証上場の大企業でゴーイングコンサーンであるシャープの経営の中枢ともいうべき経営企画、財務担当の取締役を銀行が「派遣」するのは、銀行の企業支配以外の何物でもない。


銀行が融資先の企業経営へ参画することは、株主のみならず、その他の融資銀行や、ステークホルダーとの関係で著しい利害相反の問題を引き起こす。株主にとって信頼できる経営体制であるかの基本的な問題となる。銀行派遣の取締役を起用する合理性、そこまでせざるを得ない経営状態の逼迫について、シャープ経営陣は取締役選出を行う株主総会で十分説明すべきである。


みずほコーポレート、三菱UFJの両行は経営の中枢に人材を「派遣」するという重大なコミットをした。シャープのインサイダーになったことであり、両行の同社に対する貸付金は簡単には引き上げることはできない。実質的には貸付けが株式化したのである。両行の経営はこの重大性に鑑み、自行の株主に対し株主総会などで「経営支援」の合理性を説明することを求められる。


(文責:門多 丈)



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