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オリンパス事件と取締役・監査役の責任(2) 門多 丈

2011年11月21日
オリンパス事件はコーポレートガバナンスのあり方、社外の取締役・監査役の果たすべき役割、内部統制の整備の重要性、について多くの示唆を与えてくれる。今後は社外取締役の数と多様性の重視や、連結ベースでの内部統制の整備が必要となってくる。
オリンパス社の不祥事を契機に「社外取締役は機能しない」との議論が再燃しているが、今回の問題の核心は社外取締役の独立性にある。以前から証券営業での取引関係があり、オリンパス社の「飛ばし」操作を指南したとの噂がある人物が社外取締役に就任しているのである。今回の事件はコーポレートガバナンスのあり方、社外の取締役・監査役の果たすべき役割、内部統制の強化の重要性、について多くの示唆を与えてくれる。

第一に社外取締役の数である。経営陣の業務執行を適切に監視し「社外の目で」取締役会を運営するには、複数の社外取締役による「数の圧力」も必要であることがはっきりした。ファクタ誌であれほど大々的に当社の疑惑について報道されていながら、取締役会で早期に取り上げ事件の解明をすることをなぜしなかったのか。ウッドフォード氏を社長から解職するにあたって、さほど取締役会で議論せず同氏には「発言の機会を与えなかった」こともコーポレートガバナンス上の大変な問題である。

次には、社外取締役・監査役のバックグラウンドの多様性と専門性の問題である。今回のようなM&Aや「飛ばし」などの複雑な構造の取引、企業評価の妥当性についての議論を取締役会で有効に行うためには、ビジネスセンスのある金融・経理の専門家が社外取締役として参画することも重要になってくる。そのためにも上述のように複数の社外取締役の採用をすることとし、その中で多様化を図る必要があろう。

「飛ばし」自体を取締役会で発見することは技術的には難しく、会計監査人の手腕に期待すべきであるとは思う。(「飛ばし」の時点で投資証券勘定の中身が変わったわけであるからその精査を行うとともに、投資証券・ファンドの売却に伴い妥当な損益計上をしているかを調査することは、会計監査人の専門家としての義務である。)取締役会としては、事業会社として、さらにはメーカーとしては巨額な有価証券での運用を行うべきかの是非を徹底的に議論すべきであったのではないか。

海外にSPC(特別目的会社)を設立するような複雑な取引や巨額な報酬の支払いを伴う案件について、取締役会に然るべく諮ることを明確に定める内部規定の整備も求められる。連結ベースでの内部統制の強化もますます重要となる。今回は子会社の優先株取引を通じて巨額な報酬の支払いが行われた。また大王製紙の不祥事では子会社からオーナーに対して不正な貸し付けが行われた。子会社の経営の業務執行を然るべき監督するために、連結ベースでの内部統制の整備も重要になってくる。

(文責:門多 丈)

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