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オリンパス事件と取締役・監査役の責任 門多 丈

2011年11月14日
オリンパス事件に対してウッドフォード氏の取った行動の、日本のコーポレートガバナンスに与える教訓は大きい。Diversity (価値観の多様性)と社外の目の必要、取締役の業務執行と監査役の監督の責任の重さについてである。
オリンパス社のウッドフォード前社長の「内部告発」については後継社長として指名した菊川元社長にとっては「飼犬に手を噛まれた」と見る人がいる一方、海外には「日本の閉鎖的な企業社会を打破した」と英雄視する論調もある。何れも間違いであり、ウッドフォード氏はファクタ誌に書かれたような不正支払いの疑惑をそのまま放置すると自らが経営の責任を問われ、代表訴訟にも巻き込まれるリスクに対して防衛措置をとったのである。

しかしながらこのウッドフォード氏の行動の日本のコーポレートガバナンスに与える教訓は大きい。一つはdiversity (多様性)と社外の目の重要性である。自分を後継社長に指名してくれた恩義は別にし、企業の不正に対しては自分を律して動く価値観はなかなか日本の風土では育っていない。ここには社内から役員になる日本企業の村社会の意識はない。ウッドフォード氏は明確に株主と社会を意識し動いたのである。

もう一つは取締役の業務執行やその監督に関しての取締役や監査役の責任の重さである。ウッドフォード氏はその責任を自覚し実行した。特に代表訴訟で「故意」や「重過失」と認定されると、役員の賠償責任保険は支払われず、会社法での損害賠償の上限が適用されない。個人的には巨額の損害賠償の支払いを求められるリスクである。業務執行の責任に関しては取締役会で「良く調べ」「リスクも含め決定の是非を十分議論し」「明確な意思決定をしたか」か、取締役各個人がその責任を問われる。監査役は取締役が適性に業務を執行しているかの監督の責任を問われる。この基本的な行動がいかに重要なことかを、今回のオリンパス事件は示している。

今回の事件を反省し、新生オリンパス社がどのようなコーポレートガバナンス体制をとるべきかについては、11月13日付けの安田正敏氏執筆のブログ「オリンパス再生の道」の提言をお読みください。

(門多 丈)

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