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オリンパス再生の道 安田 正敏

2011年11月13日
オリンパス再生のためには、社長自ら率先して会社から独立した指名委員会を立ち上げ、優秀な幹部社員、外部の有能な人材の中からオリンパスの再生を担う役員候補を選ぶことです。その後、やはり社長自ら率先して臨時株主総会を招集し、そこでウッドフォード元社長を除く現役員が全員辞任し、株主の信任を得た社外を含む取締役・監査役を選任することです。
オリンパスの企業不祥事は、巨額損失の飛ばしという90年代のデジャビュを見るような展開になりました。詳細については第三者委員会が調査中ですし、新聞等のメディアで詳しく報じられていますのでその内容についてはここでは触れません。ここで論じたいことは、どうすればオリンパスの経営のなかで起きたような企業不祥事を防ぐためのコーポレートガバナンスを機能させることができるかということです。

この点についても、民主党が社外取締役を義務付ける等会社法の改正を進める方針であると報道されています。また、コーポレートガバナンスについての識者の方々も社外取締役の必要性、できれば過半数の社外取締役の必要性を説いています。筆者もその必要性については全面的に賛成です。しかし、それだけで十分かというとそれは疑問です。なぜならばオリンパスには3人の社外取締役がいたにも拘わらず、M&Aアドバイザーへの常識を外れた巨額の報酬等に対して疑問を呈し注意を促すことすらしなかったからです。また、取締役の善管注意義務違反を防ぐ役割の常任監査役がこの不祥事に深くかかわっていたことを見ると、コーポレートガバナンスの外形的な整備だけではコーポレートガバナンスを機能させるには不十分であるということを思い知らされました。

それでは、外形的整備等の必要条件に加えて、コーポレートガバナンスを機能させるための十分条件とは何でしょうか。それは取締役、監査役(役員)の意識改革です。役員の一人一人が株主に対して法的責任を負っていることを骨の髄から自覚することです。そして、その責任を全うできなかった場合、最終的には株主代表訴訟という形でその責任を全うすることを法的に強制されるということを自覚することです。もうひとつ重要な点は、会社の役員に選任された段階で、「いつ辞めてもいい」という覚悟を決めることです。これは、決してやさしいことではありませんが、この覚悟がないと今回のオリンパスの役員のように社長の不正な行為に対して異議をさしはさむだけの気概が持てず、結局うやむやのうちに他の役員の不正に巻き込まれ自分自身も同罪となる結果に終わります。

ここで述べた観点を踏まえると、会社法の改正等を待たなくてもオリンパスの再生のために現在の役員にできることはあります。最初に、ウッドフォード元社長を除くオリンパスの現役員全員辞任の覚悟を決めることです。そのうえでオリンパスの再生のための道筋をつけることです。具体的には、社長自ら率先して会社から独立した指名委員会を立ち上げ、優秀な幹部社員、外部の有能な人材の中からオリンパスの再生を担う役員候補を選ぶことです。その後、やはり社長自ら率先して臨時株主総会を招集し、そこでウッドフォード元社長を除く現役員が全員辞任し、株主の信任を得た社外を含む取締役・監査役を選任することです。幸いにしてオリンパスは高い技術水準と高品質な製品、それを支える高い資質をもった技術者と社員を持っています。できるだけ早くこのような方法で健全な経営への軌道修正をすればオリンパスは再び優秀な競争力のある企業に甦るはずです。

新しく社長になった高山氏は記者会見で「オリンパスを愛している」と語っています。本当にそうであるならば、企業価値がさらに毀損し他の企業に買収されるというような事態になる前に、率先して上記の行動をとることがオリンパス再生と企業価値回復への唯一の道ではないかと思います。それができれば、高山社長は、企業不祥事は防げなかったが、少なくとも企業不祥事の後始末でコーポレートガバナンスを機能させた日本でも数少ない経営者の一人として評価されるのではないでしょうか。

(文責:安田正敏)

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