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アメリカは大丈夫か? 門多 丈

2011年10月31日
米国の経済の停滞とファンダメンタルの脆さは重要な問題だ。今後もドルの低下が続くと、米国の対外負債問題はギリシャと同様に深刻化するリスクが何れある。その際に州レベルでの財政破綻も顕在化すると、現在の欧州共同体の中でのギリシャと同様の構造上の複合的な問題を引き起こすであろう。
先日カリフォルニアに出かけスタンフォード大学のビジネス・スクールの卒業30周年の集まり( Reunion )に出席した。懐かしい面々と再会したが模擬クラスでの議論が面白かった。インドなどBRICsで活躍するクラスメートにそれぞれの国の可能性と課題をパネルで話してもらったが、親しい仲間での議論であり、「賄賂、腐敗問題をどう考えるべきか」などの鋭い質問も出た。

米国人であるが卒業後27年ほどスイスのジュネーブにいる米国系有力投資顧問会社の幹部(副会長)に対して、「ギリシャはどうなる、欧州はどうなっているのか」との質問が席上で出たが、彼これに対しては「米国連邦政府債の対外借入依存の大きさやカリフォルニアなどの州レベルでの財政問題の深刻さを考えると、米国は潜在的にギリシャと同じ問題を抱えている」と鋭く指摘した。

今回米国に行って聞いたのは経済の停滞の厳しさである。失業の問題は深刻であり知人は「失業率も高どまりだが中味はもっと深刻で、長期間の失業者の割合が増えている」と言っていた。収益プレッシャーの中で経営者が雇用を増やせないのが実情のようだ。街角での物乞いも増えている。英国で暴動が起こったような若年層の不満も累積していると思う。格差の問題は既に反ウォール街デモを起こしている。

不動産価格の上昇は見込めず、住宅ローン問題は依然として残っている。ロスアンゼルスの高速道路(フリー・ウェイ)は渋滞が激しく路面もかなり傷んでいるが、財政問題があり十分な修繕ができないと言う。最近のゴールドマン・サックスの赤字決算のように投資銀行の業績は不振である。世界的な信用不安の中で米国の金融機関も融資や資産を圧縮している。

このようなファンダメンタルの脆さを見ると、「米国の対外負債の問題は潜在的にはギリシャと同じ」とのクラスメートのコメントは気になる。やはりこのままドルの低下が続くと、米国の膨大な対外債務が許容されない時が来るのではないか。その際に州レベルでの財政破綻も顕在化し問題が複合化すれば、現在の欧州共同体の中でのギリシャのそれと同じ厄介な事態になると思う。

(文責:門多 丈)

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