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政治家の言葉の軽さと官僚の怠慢 門多 丈

2011年06月10日
政治家の発言は重く、ましてや「嘘をつく」ことは政治生命を失うことである。今回の震災、原発事故対応でも官庁の動きが鈍い。民主党政権が誤った政治主導を標榜した結果である。
菅首相の退陣に関しての「確約書」を巡って、鳩山氏が「嘘つきはいけない」と発言した。米軍普天間基地の移転問題で " Trust me "と言いながら約束を守らなかった鳩山氏には、このようには言って欲しくない。このことで日米間の信義を裏切り、日本の国益を大いに損なった責任は大きい。

英語には"My word is a bond."という表現がある。約束は口頭で行っても拘束力のある証書を出したことと同じという考えである。米国の政界用語と思うが、"Please read my lips." という言い方もある。奇妙な表現であるが、言葉になっていないでも「約束は重い」という意味である。90年ころ景気の悪い中で増税をするのではと多くの国民が懸念した時に、当時のブッシュ(父)大統領がこの言い方をした。「増税はしないので信じて欲しい」とのメッセージを暗黙に伝えたのである。議会証言では聖書に手を置いての宣誓を行う慣例もある。このように欧米では政治家の発言は重く考えられる。ましてや「嘘をつく」ことは政治生命を失うことである。

東日本大震災の当日3月11日の夜の菅首相の国民へのメッセージについても検証されるべきである。震災後(午後7時ころ)最初のメッセージの中で菅首相は「原子力発電施設の安全を確認した」と言っていた。どのような調査をし、どのような根拠でこのような発言をしたのか。これについて菅首相には説明義務がある。先日ハーバード大学の「白熱教室」での日本の地震・津波災害と原発事故についての討論を聞いた。今回の日本の危機管理の最大の問題は、政治のリーダーシップの欠如と政府・東電の情報公開の姿勢と指摘した論者がいた。国民の政府や東電に対する震災後の不信は、根拠のない安全発言と泥縄式の事態の悪化が原因である。

今回の震災、原発事故対応でも官庁の影が薄い。サボタージュに近いと思われるほど官僚の動きが鈍い。民主党政権が政治主導を誤って標榜した結果と思う。政治主導とは政治が独断で動くことではない。「政」が国のミッションを明確に示し、「官」の知恵や行政能力を上手く管理し活用することが肝要なのである。「官」の動きの鈍さの原因には「政治が責任を取らない」ことがあると喝破した友人がいた。まさに政治の責任である。

(文責:門多 丈)

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